Sari

愛の部屋、裸の2日間/朝までの二夜のSariのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

異国で出会ったフランス人の女とフィンランド人の男。思いがけず二夜を共にすることになった男女の揺れる心を描く大人のラブストーリー。
邦題から官能映画の類を連想させるが、そうではなく、余計な説明が排された心理ドラマのため、あらすじを辿り伏線を解いてみたくなる。中々、佳作の小品である。


仕事の会議が長引き、リトアニアで一泊することになったフランス人女性キャロリーヌが、ホテルのバーでフィンランド男性と出会う。
彼女は英語が話せず、彼はフランス語が話せない。そんな状況を楽しみながら2人は一夜を過ごした。翌日キャロリーヌは帰国する予定だったが、火山灰の影響で欠航となりもう一泊する事になるも空室がなく、男の提案で彼の部屋で宿泊することになる。

朝になりキャロリーヌの電話が鳴るが、英語で話す相手は彼女のパートナーの女性だった。一夜限りの相手との会話が面倒で英語が話せないふりをしていた事を男に正直に話す。キャロリーヌはレズビアンだが、時折男性とも楽しめる所謂バイセクシャルで、職業は建築家、今は空港のデザインを手掛けていることも打ち明けた。

男の名はヤッコと言い、職業はDJ、ライブツアー中の滞在だった。ライブ会場へキャロリーヌを連れて行ったり散歩をしたりしてキャロリーヌが少し心開きかけていくも、キャロリーヌにはヤッコは気儘な男に見えていた。
旅先でのナンパ男のことを簡単に信用出来ないのは致し方ないが、意図的に近寄りがたい空気を醸し出すキャロリーヌは何か抱えているようだ。
やがてヤッコには娘からの電話が鳴り、妻に新しい相手が出来て離婚したが、引き取った娘のために仕事に精を出していると打ち明けられ思わぬ彼の苦悩を知る。

一方、キャロリーヌと現パートナーとの出会いはギャラリーで価値観が全く同じですぐに同棲を始めたというが、束縛と嫉妬心が強いタイプで旅先にも執拗に電話をかけてくる、彼女との関係や同棲生活に息詰まっていたのだろうことが伺える。
キャロリーヌとパートナーの会話が最初のスマホから、PC電話に変化し、パートナーの顔が映し出されるその外見がキャロリーヌと瓜二つなのも意図的な演出だろう。

いま手がけている空港の待合を従来型の堅苦しいものから、人がより集る斬新なデザインへと試しみるキャロリーヌ自身も、変化を求めている女性で、終盤での空港のシーンも良い。
キャロリーヌ役のマリ=ジョゼ・クローズは、表情、主に目で訴えかける演技力が素晴らしい。
冒頭からのありきたりな男女の出会いから、異なる言語のなか進められる展開には想像を裏切られ、抑えた会話で彼女の演技が際立っている。
ホテルが出会いと情事の場所のみならず、エレベーターのボタン、Wi-Fiなど演出上機能していた。
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