えるどら

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章のえるどらのレビュー・感想・評価

2.6
世間が言うほど悪い作品ってワケじゃあねェ…。
だがよォ…。
主演とラストシーン、こいつァどういう了見だァ!?ダボがァ!!

『ジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けない』を実写化した本作。
世間での言われように対して個人的にはそれほど悪い作品とは思えなかった。
理由はたくさんあるが、ひとつは広瀬康一と山岸由花子の再現率の高さだ。
実写化っていうのは似ていればそれで良いというわけじゃあない。
というより、イラストであるキャラクターを現実に忠実に再現することなど不可能である以上、いかにそのキャラのもつ雰囲気やイメージを再構築するかが重要なのだ。
その点で言えばこの2人の表現はかなり良かった。
いろいろ端折っている関係で山岸由花子の説明がほとんど無いのは残念だが、メインキャラである康一がしっかり康一しているのはかなり評価が高いポイント。

この2人とは別ベクトルで良かったキャラが虹村億泰だ。
個人的な印象だが、かなりアニメの億泰に近いように感じた。
億泰は「顔や衣装に違和感はあるものの、たしかに億泰である」と感じられた。
虹村邸での戦闘での億泰が大好きなので、億泰のクオリティが高いのは個人的に評価高い。

以上のような、映像の中で特に目が行くポイントのいくつかが好感触であったため、世間で言われているほどガッカリはしなかったというのが私の感想だ。
これより「そうはいってもこれは許容できない」ポイントを語る。とはいえ、すべて語っていたらとんでもない量になってしまうためどうしても許せない2か所だけ…。

ひとつは、主演の演技から仗助の持つ熱があまり感じられないところ。
これは山崎賢人の良さなのかもしれないが、彼の演技のスッとした感じがどうにも仗助の熱さを表現できていないように見えたのだ。
(これはほんとに個人的な感覚なのだが)私は山崎賢人の演技があまりすきではないのかもしれない。
『氷菓』の実写版のときも主演の山崎賢人だけがどうにも受け入れられなかった。
体格が仗助に比べて華奢であり、服に着られている感じがしたところ(これは承太郎も同じく)も大きな違和感の正体かも。
サブキャラが杜王町の住人なのに、主人公の仗助が「仗助っぽいセリフを言う日本人」になっていたのが個人的に残念なポイントだった。

もうひとつはラストのキラークイーン・シアーハートアタックの登場だ。
これは良い悪いの問題でなく甚大な解釈違いであり、監督はなぜこれにGoサインを出したのだと言わざるを得ない巨大マイナスポイントだ。
何か理由があるなら作中で説明して欲しいし、こちらを納得させるための続編を早く出してくれ。
本来、吉良吉影は植物のような心で平穏な暮らしを望んでいるのだ。そんな吉良がまったく自分に関係ない他所の家の屋根裏にSHAを投げ込むはずが無い。ラストのSHAは吉良吉影というキャラを真っ向から否定する愚行であり、人気キャラの面影をとりあえず出して客の関心を引こうとする監督の自信の無さの現われでしか無い。

以上2点を踏まえて「監督はこの作品をどのような作品にしたかったのだろうか」という疑問が浮かび上がった。

もし原作を知らない人に、ジョジョという作品を山崎賢人や神木隆之介をはじめとした馴染み深い俳優を通して知ってもらうことが目的なのであればあまりに説明が少なすぎて置いてけぼりになってしまう。
映画も全体的に暗いし、アンジェロの下りは原作に忠実に作った方がよほどわかりやすくて楽しい映画になっただろう。
今後もパート2に繋げていく予定があったのならば杜王町の全体図を公開したり、キャラクターを丁寧に登場させることだってできたはずだ。

もし原作ファンにジョジョの新しいアプローチをしたかったのであれば、脚本に信念が足りないように思う。アンジェロを凶悪な犯罪者というイメージに近づけたのは良かった。虹村慶兆戦も良かった。だが2部構成になっているためテンポが悪いのと、本来何話にも渡って描かれる物語を映画に詰め込んでいるので山場が乱立していて疲れるのだ。あとラストシーンが許せない。
原作ファンの心に響かせるためのカタルシスが足りないように感じた。
脚本と監督の手腕不足だろうか…。

総評としては「思っていたよりも悪くはなかったが、決していい映画とは言えない」だ。
多額の予算をつぎ込んで原作ファンを唸らせる作品を作り出せれば誰も文句は言わなかっただろうが、監督にその手腕があるとは思えない。
原作の物語をなぞりながら2時間の映画にまとめて俳優を売るならそれはそれで悪くなかったように思えるが今作はそこまで適当には作られていない。
次回作、あるならたぶんちゃんと見るよ。
私は4部と杜王町のみんなが大好きなんだ。
だが、ラストのSHA、てめーはダメだ。
えるどら

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