このレビューはネタバレを含みます
原作が好きなので鑑賞して参りました。
ジョジョは自分が映画を観るようになったきっかけの漫画でもあり思い入れも強く、映画化されると聞いた時は不安もあったのですが、今作は思ったより悪くなかった!
もちろん100点の実写映画ではないし不満点も後述しますが、少なくとも真面目に映画化しようとする姿勢が感じられて好感が持てました。
まず良かったのは下手な監督がやっていたら大惨事になっていたであろう脚色が適格で、ちゃんと一本の映画として見られる出来になっていたところです。
自分はやたらと擬音を連呼したりジョジョのポーズを真似たりする自称ジョジョ好きが苦手で、今作でもわかっていない作り手が安易なジョジョ要素を前面に押し出した作品になったら最悪だと思っていたのですが、幸い今作はそのようなことはなく実写化に際して要素をちゃんと取捨選択できていたのでまず安心しました。
擬音やジョジョ立ちって確かに特徴的でジョジョらしさを構成しているものですが、それらあくまでジョジョの魅力の一要素でしかなく、漫画内だからこそ成立しているダイナミズムを実写に持ち込まない三池監督のクレバーさは流石ですね。
「父親」という一貫したテーマを設けているところも良くて、アンジェロをただの快楽殺人者ではなく父親を殺してしまったために人生が歪められたと倒錯している人物と改変したり、原作だと数話で退場してしまう良平のキャラを深く掘り下げて対比を明確にしているのも良かったです。
特にアンジェロの再解釈はお気に入りで、原作のように殺しを心から楽しんでいるキャラではなく、殺さなければ生きていけないことを宿命づけられ、それに抗えないことに被害者意識を持っているという原作の吉良吉影のようなキャラ付けをされていて思わず膝を打ちました。
山田孝之の流れに逆らわない脱力した演技も人間味を増したアンジェロにピッタリで良かったです。
父親に人生を歪められたと憎むアンジェロや形兆に対し、父親を尊敬し真っ直ぐ育った仗助がその想いを受け継いでいく、ジョジョの一番大事な要素である「継承の物語」描けているのも好感が持てましたね。
危惧していたスタンドバトルも思いのほか悪くなかったです。
特に敵スタンドが良くて、原作だとクリーチャーじみていたアクアネックレスが実写化されるとちゃんとカッコ良くなるというのは新たな発見だったし、荒木先生がデザインし直したというバッドカンパニーもなかなか迫力があったと思います。
人型スタンドは意外と出番が少ないという難点はありますが、CGで感じる異物感が逆にスタンドっぽいと思ったし、ザ・ハンドの手の動きとかカッコよかったです。
キャスト陣の演技に関してはオリジナルの味付けがされた良平とアンジェロを演じた國村準と山田孝之を除くと、原作ファンのヘイトは溜まってしまうかもしれないですね。
特に山崎賢人と伊勢谷友介は頑張ってはいるんですが、軟弱な感じは否めずコレジャナイ感はあったかもしれません。
個人的にはコンビニ強盗を演じた柳俊太郎が一番ジョジョ感があって良かったです。
だから今作はちゃんと映像化にあたっての勝算を持って作られており、企画ありきの適当な映像化ではない誠実さに好感が持てるんです。
ただ手放しに誉められない欠点もあったのは事実で、まず一番ネックだと思うのはテンポが悪いところです。
最近作られたアニメでは原作が持つ過剰さやページをめくる疾走感を映像にできるだけ忠実にトレースすることを目標として作られていて、原作ファンの不満を溜めない作りになっていたと思うのですが、今作は結構なローテンポで「ジョジョを観てる!」という気分になりにくいんですよね。
前述した擬音やジョジョ立ちを排したのはとても良かったのですが、過剰な情報量を高速で処理していく疾走感がないので、間延びしたところも多くグダグダになっているように見えて勿体ないと思いました。
特に虹村邸での戦闘シーンで、仗助が億泰を直したあとにする「なぜ直したか」のやり取りは、康一を早く治さなければならない状況なのに悠長にしゃべっているように見えず緊張感が損なわれていたのが残念でした。
仗助がバッドカンパニーのミサイルを直して跳ね返すくだりも、それまでは一瞬で物を直していたクレイジーダイヤモンドが、なぜその時だけ康一の時間稼ぎが必要だったのかロジックが示されないのでやはりグダグダというか。原作にはない康一の見せ場を作りたかったのかもしれませんが、ちょっと無理矢理な感じは否めませんでしたね。(ポンコツエコーズは可愛かったけどw)
原作ではまだ登場していない由花子も小松奈菜のビジュアルとか超完璧なのに今作では本当にただ登場し意味深な言動をするだけなので、テンポの妨げになっているのもチグハグな印象でしたね。
あと仗助に関しては「苦手な亀を触ろうとしている」とか原作のチャーミングさがあまりなく、どちらかと言えば承太郎よりのクールなキャラ付けをされているのもちょっと不満でしたね。人当たりの良さが仗助の特徴だと思っているので終始クールな感じで終わってしまうのは違和感がありました。
とはいえ、自分はこの実写化はちゃんとした戦略を持って作られ、安易なジョジョの要素を入れ込まない誠実さを感じる出来でありました。
次回作が作られるかは興収しだいかもしれませんが、もし作られるならこの調子で慎重さを持って作られて欲しいと思います。