YAJ

女神の見えざる手のYAJのネタバレレビュー・内容・結末

女神の見えざる手(2016年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

【本当の理由】

 圧倒的なスピード感でラストまで観客をハイテンションで引っ張る脚本はお見事!

 いっぱいいっぱいな感が拭えないけど(初脚本作品らしい)、今後楽しみな作家さんかもしれないジョナサン・ペレラ(俳優ばりのイケメンの元弁護士だ)。
 アメリカのロビイストの活躍を描いたもの。敏腕ロビイストが銃規制法案を巡る政争に挑む。

「ロビイングは予見すること(foresight)」
「敵が切り札を切ったあとに、自分の切り札を出す」

 映画冒頭から繰り返される主人公(ジェシカ・チャスティン)の決め台詞。その通りにストーリが進むので、結末は自ずと”予見”されるのだが、敵味方、優劣が絶えず左右する展開、丁々発止の怒涛の台詞回しに息つく暇もない。2時間超の尺を長くは感じなかった怪作?快作と言っていい出来だろう。

 ただ、なんとなくモヤモヤが残るのは、一つは、徹底して人間性を排除した主人公のキャラ。共感できない。
 一つは、病んだアメリカ、というかロビイ活動で左右される政情って、どうなの?という点。 例えば、この作品の中で議論される「銃の所持」の可否は、いったい何が”正”なの?という疑問。誰もが、”本当の理由”そっちのけで、クライアントの依頼で、仕事として”勝つため”にだけ戦っているのって、なんか違うよなという腑に落ちなさ。

 それを排除するために両陣営の主要プレイヤの人間性が多少でも語られていればよかったのに、主人公でさえ、なぜ銃規制に賛成なのか?この法案を通そうとするモチベーションは何なのか? それが描かれていなくてつまらなかった。

 コンゲームと思って観りゃいいんだけど、ならば、少しのユーモアがあっても良かったのにと思うところ。スゴイ作品と思ったけど、何か大きなものが欠けている気がした。
 それはこの作品そのものの欠陥ではないのかもしれない(だとしたら・・・???)。




(ネタバレ、含む)



 観たい作品ではあったし、会社同僚の映画好きからも再三薦められていた。やっと観れてホッとしている。そして、彼のオススメどおりに興味深い作品だった。鑑賞後に互いに感想を語り合えそうで楽しみだ。

 『スティング』ばりの騙し騙されが面白く、最後もしてやったりと主人公が勝利を手中に収める展開は爽快。悪くないのだけど、ダメ出しポイントは上述の通りだ。
 あとは、聴聞会で主人公を問いつめる上院議員役がジョン・リスゴーという点が大きなマイナス。個人的に、このおっさんはダメな悪役という烙印を勝手に捺している俳優なだけに、どこかで馬脚を顕わすんだろうなという予感、主人公に言い負かされて、口をパクパクする様が目に浮かんでしまってしょうがなかった。ロビイストじゃなくても予見できてしまう(笑)
 脚本家、監督には罪はないのかもしれないけど、キャスティング、イマイチでないかなぁ(ま、あくまで個人的に)。

 それでも、相手を追い詰める最後の切り札が、予想を超えるもので、「おぉ、そうきたか!」と快哉を叫べるもので良かった。

 あとは繰り返すけど、主人公の人間性だな。自らの不正さえもエサにして掴んだ勝利。そして刑務所に10か月ほど収監されるのだが、収監中のシーンと出所のシーンが最後に短時間で描かれる。そこで主人公が「なぜ、そこまでして銃規制を支持したのか?」が語られるか、あるいは、今まで見せなかった人間性の発露があれば、大きく☆を増やせたのだけど・・・。

 このロビイストの今後の仕事ぶりを、また見てみたいとは思わなかった。
 てなことで、続編は、、、ない?!
YAJ

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