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女神の見えざる手のペジオのレビュー・感想・評価

女神の見えざる手(2016年製作の映画)
4.3
ある時期の「良質なアメリカ映画」の系譜…主人公が闘いの果てに全てを失う事になるが「信念」は貫き通す…「試合に負けて勝負に勝つ」的な映画群
主人公がのべつ幕なしに繰り出す「的確な例え話」から浮き上がってくる「デキる人」感もやはりその系譜(序盤のルカの福音書の話が最高。)
今までは「男」が演じる事が多かったそんな役を「女」が演じている訳だが、それだけなら前例が無い訳ではなく特別珍しくも無い
新鮮に感じたのは本作では主人公が「女」である必然性がさほど無かったところ(風俗で性欲の処理してるなんて男ならありがちだし。事務的が過ぎるけど。)
もはや「女性の強さ」なんていう古臭い尺度を必要とせず、純粋な「個」としての強さのみで突き進む主人公を観てると、いよいよ男はヤバいかもしれないなと思う
そんな事を思ったのは、最近自分が「面白そう」と思って手に取った映画が油断すると「女性が主人公」の映画ばかりになっているから
男性が主人公の場合だと、演じている役者のスター性に寄りかかった映画や、マーベルに代表される様な元々のキャラクターの魅力に乗っかった映画ばかりに感じるのだ(勿論それが悪い訳では無い。)
オリジナル脚本で勝負しているような中規模で良質な映画の主人公が女性に偏って来ているような…男として恐れと畏れを感じる

物事の予測に長けた主人公(テレビで元棋士の方が本作を評価していた)を反映させたロジカルな脚本は、ラストの「激震」による大逆転よりも、銃乱射事件の生き残りを巡る件の流れる様な論理性が気持ち良かった
「あーだからメディアに慣れさせてたのね」っていう主人公の読みの凄さ(と危うさ)もスッと入ってくる

あと地味に凄いなーと思ったのは、主人公は銃規制に関して「信念」を持って取り組んでいるのだが、「その信念の出自が過去の痛ましい経験によるところではない」という部分
供給過多な情報化社会にあって、主人公の取捨選択の確かさや想像力の高さを表現すると共に、キャラクターに悲惨な過去を用意しがちな過去のフィクションの安易さに対するアンチテーゼにもなっていて現代的で痛快な設定だった

何処からか「007ごっこ」やってるって聞き付けて、きっちり出演する「スパイ専門役者」マーク・ストロングは律儀だなと思った
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