るる

女神の見えざる手のるるのネタバレレビュー・内容・結末

女神の見えざる手(2016年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

疲れていたので吹き替えと字幕両方つけて見た。みんな良い声。声優情報を頼むから表示してほしい。ビシバシ脳に台詞が刺さってきて、文字でも情報を補いながら見ることができて良かった。吹き替えなしであと二、三周観たい気持ち。

政治を扱い、豊富な情報量をさばく、テンポの良い脚本。ポスト、アーロン・ソーキンと言われる理由もわかる。アーロン・ソーキンが持つユーモアが足りていないところだけ、ちょっと気になるけど。情報を出す順番が見事で、そこが持ち味になるか。キャリアウーマンの切れ味、倦み疲れた姿を見せてくれたのは本当に良かった。今後、絶対に追いかけたい脚本家。
アーロン・ソーキン脚本監督の『モリーズ・ゲーム』の公開を楽しみにしてるんだけど、アーロン・ソーキンが女性主人公をどう描くのか、楽しみで、気がかりで。良い比較になりそうで。本当にね、生きる楽しみが増えた気持ち。

大好きなドラマ『ニュースルーム』のキャスト、サム・ウォーターストンとアリソン・ピルが出てて、主人公の役名がミス・スローン。笑っちゃった。

最も信頼できる女優のひとりジェシカ・チャスティン。おまけにマーク・ストロングが出てる、最高かよ。そして最近話題作で大活躍だな、マイケル・スタールバーグ。覚えたよ。

贅沢すぎた。贅沢すぎる時間だった。

あの男娼は、きっと、あの日、涙を見せた彼女に対して、仁義を切ってくれたのだと信じたい。いや、というより、彼もまた、プロフェッショナルだったのだろうと思う。要望の分からない客の思いを推測して行動することもあると言った彼はきっと、あの夜の料金分の仕事をしたのじゃなかろうか。

彼女は徹底したプロフェッショナルだった。チームに計画を明かさなかったのは、彼女なりの仁義だった。

満足感が。もう。とんでもない。

アリソン・ピルのファンで良かった。これからもスクリーンで活躍を見られそうで嬉しい。頑張ってほしい。

好きな俳優がこれだけ出揃っていて評判も良いのだから劇場で観るべきだったなと思う。でも、いまゆっくり見られて良かったのかもしれない。

彼と乾杯したかったのに、できなかった。きっと誰かと話したくて密偵に電話したけど、話せなかった。誤解される生き方しかできない彼女は、きっと永遠に孤独。でも、きっと生きていける。キャリアを失っても。彼女は己の正義を貫いた、圧倒的な勝利を掴んだ、そしてほんの少し、ほんの少しの愛を確かに受け取った、大丈夫、きっと。叫び出したくなるような瞬間があっても。壮絶な修羅の道を行ききった。

脳が痺れる、最後の大逆転劇。最高だった。見事としか言いようがない。伏線がきちんと機能してたかというと、チョット疑問だけども。

刑期を終えた彼女を、誰かが、迎えにきてくれたことを祈る。そして少しでも、彼女が夜眠れるようになったことを祈る。

溜息。


2018.4.16.追記、
流しに薬を捨てて聴問会に臨んだり、コップに水を注ぐ動作が印象的だったので、密偵に電話して繋がったけど、話せなかったとき(あれは部下と話せなかった苛立ちより、部下に電話することで告発の材料を探せと合図したことで、その後の聴問会へのトリガーを自ら引いた、プレッシャーの爆発なのかな)の爆発を、机の上のファイルを投げ捨てるのではなく、コップに水を入れそこなう、というような繊細な表現で彼女の動揺を見たかったかも、そういう緻密な脚本なら、もっと好きだったかも、とは思った。銃規制強化なんて当たり前でしょ、という感覚は日本人だからだと思うので、本国で賛否両論なのはわかる気もした。両論併記した上で、それでも映像が正義を物語る、という作りではなく、あくまで、ミス・スローンの辣腕、剛腕を描く映画だったと思うからこそ。

二周目でスグ、ソクラテス、なるほど。と思った。なるほど。うまい。
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