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エゴン・シーレ 死と乙女のpikaのレビュー・感想・評価

エゴン・シーレ 死と乙女(2016年製作の映画)
3.0
序盤のカーテンを剥いで切ってミシンで縫う一連の流れを一気に見せるくだり、「死と乙女」を描く流れ、大きな鏡を使って絵画の構図を映像で見せる演出、従軍中のホテルなど良いシーンはあるが全体的に余りにもキレイ過ぎる。エゴン・シーレのイケメンぷりは良いとしても貧乏設定なのに部屋は清潔だわ刑務所にいても小綺麗だわ光は燦然と輝いているわシャレオツな雰囲気を狙いすぎているように見える。好みの問題だろうか。綺麗なものを汚く見せる方がテンションあがる個人的に。

エロス芸術の画家だからって女性遍歴に重点を置きすぎているようなエピソードの抜粋や、Wikipediaに書かれている史実を羅列してているだけの味気なさ。
最近妙に見る機会が多かったので気にして見ていたんだが画家(芸術家)映画って難しい。実話物として見るならば真っ当な構成でも芸術家のドラマであるならば偏狭的でも自身の芸術活動に対する熱意や叙情を見たい。
オールタイムベストが『モンパルナスの灯』だからそう感じるのかもしれないが、タルコフスキーの『アンドレイ・ルブリョル』くらい映画のために都合良く史実を改変してもいいのではないか。史実をそのまま映像化しただけなら映画と言うよりも再現映像であるだけではないか。『放浪の画家ピロスマニ』のように映画そのもので画家の生み出した作品を語るような、何か映画であるからこその魅力や醍醐味みたいなものが欲しい。
いちゃこいているときに「動かないで」と絵を描き始めたり「絵を書かないと死ぬ」と愛してもいない人を選んでしまうことから垣間見える絵に対する情熱、そこが見たいしその部分こそがメロドラマめいた煽りよりも重要視したい。
近年の人物だから勝手な解釈では語ることが難しいのだろうか。そこまで踏み込む覚悟がないのか。『ジャコメッティ最後の肖像』でそうだったが、配慮して史実を再現すると人物描写も淡白で表面的になり、再現映像の域を出ない語り口と合わさってせっかくなのに勿体ないなと思うものにしかならない。
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