みや

風鳴村のみやのネタバレレビュー・内容・結末

風鳴村(2016年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

秘密を抱えるベビーシッターのジェニファーは、雇い主に偽造パスポートがバレて逃走する。警察から逃れるために観光バスツアーへ紛れ込み、オランダの風車を巡っていたが、エンジントラブルでバスが止まってしまった。
全員が後ろめたい過去を持つツアー参加者とジェニファーは、救助を求めて風車へ向かう。そこが地獄の入口とは知らずに…

「実録!恐怖の村」シリーズとは全く関係が無い、ヒット作便乗パクリ系タイトルの一種。日本映画界の悪しき慣習だと思っているのだけれど、実際にこうやって観ちゃうわけだから成功に加担してしまっているわけです。しかも、そういうB級映画が嫌いじゃないのよね。
原題は「The Windmill Massacre/The Windmill」。直訳だと「風車の虐殺」。え、風鳴村ってめちゃめちゃオシャレじゃん…。
そんなわけで観る前から複雑な感情になって視聴開始。結論から言うと、面白くて悔しかった。

前半はオランダや風車について学べて観光気分を味わえる。「魔術を使って悪魔と契約し、風車小屋に住む製粉業者の殺人鬼」の伝承という日本では絶対に出会えないご当地怪談も興味深かった。これは実際にあるのかな?
そんな楽しそうなツアーなのに、参加者は怪しい人たちばかりで全く盛り上がらない。仕事優先の父と文句の言えない息子、グロテスクな絵を描く医者、崖っぷちの写真家、祖母に祈りを捧げる日本人、仲間と作戦を目論む軍人、そして幻覚幻聴が襲うヤク中の主人公。どうやって集めたの?って訊きたいくらいに訳ありな人しかいない最悪なツアー。その都合の良さがいいんです。
推しは日本人のタカシ。英語を話す日系ではなく、英語がまるでできなくてひたすら日本語だけで突き進む日本人に親近感がわいた。と思っていたら、一番ぶっ飛んだ奴だった。めっちゃ笑った。タカシ、良いキャラだったわ。なぜ彼が一度許されたのかが気になります。

緊迫感はあるものの、淡々と物語が進んでいたら一気にスプラッター開始!と思いきや、続かない。一瞬の爆発力が過激なタイプだった。内臓はがっつり出るし、首も勢いよく吹っ飛ぶのに、あっさり系で粘っこくない。殺人鬼側から「苦しめよう」という意思を感じなかったからかも。「殺そう」「罪を裁こう」が殺戮の理由だから、そんなに楽しそうに見えなかった。楽しいのは私だけだった。

ずっとシリアルキラー系だと思って観ていたら、結構終盤でオカルトホラーだと理解して驚いた。そう気づいた時と悪魔を退治した時が同じタイミングだったから、ちょっと複雑。びっくりした。確かに写真家のお姉さんが水溜りの中から出てきた腕に殺されてたもんなあ。あれは人間には無理だよね。

ジェニファーが過去に冒した罪、息子を救えなかったトラウマを乗り越える物語でもある。その後、一気に絶望へ突き落されるわけだけれど。スプラッターならそうこなくっちゃ。
カート少年は最後どうなったんだろう?生き延びたの?風車はいつ、どうやって建て直したの?など疑問は尽きない。でも、そんな疑問が幾ら残ってもオールオッケーなのがB級スプラッタの良い所。楽しかったです。
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