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そうして私たちはプールに金魚を、のRenのレビュー・感想・評価

3.5
この事件のことは朧げながら覚えている。鬱屈女子高生のこれ以上無いプロモーションビデオ。純文学にPV的編集を施したらこうなる、の好例だった。

何かが起こりそうで何も起こらなかった27分。エモーショナルに見せかけた虚無の映画。青春期なんてそんなものだ。
退屈な毎日や退屈な町を嘆き、その中でせめてもの刺激を欲しようとするだけで「町から出る」ことはしないしできない。

この事件がとりわけセンシティブだっただけで、こんなケースは沢山ありそう。自分の居場所を移動する前に、今の居場所で刺激を作り出そうとして失敗する。
まだ10代だった頃の自分も身に覚えがあるような、恥ずかしくて隠していた若気の至りをくすぐられたような感覚。

金魚をプールに解き放っても、何も見えないし物語的にはとにかく退屈。屋台からプールへ移動した金魚=狭山から飛び出す(未来の)自分たち。「私は今 生きている」という森高千里の歌詞のように、どうやったって結局暗くて見えなくてどうやっても変えられないなら、今を生きていくしかない....。

カット割やカメラワークも楽しくて、映像作品としても単純に楽しめる映画でした。この情報の圧縮力とスピード感は、短編だからこそ活きていたように思う。主人公たちと同世代のティーンたちがYouTubeで閲覧することも念頭に入れているようなポップさ。

連想作品
○『アメリカン・アニマルズ』
○『初恋』(中原みすず)
○ 諸々のダニー・ボイル作品
....等々
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