ちろる

最期の祈りのちろるのレビュー・感想・評価

最期の祈り(2016年製作の映画)
3.5
人は誰でも死ぬ

健康で生きている時に思う最期の願いと、病気で苦しんでる時の最期の願いは違う

人工呼吸器に繋がれて、食事もできず、生死の境を彷徨う
そんな自分を目の当たりにして、生きたいと願う人間は少ない。
これで生かすのは残された家族の願いが強い。
家族は思う、奇跡が起こるのではないか?と
可能性があること全てを試したいと思う家族の気持ちは愛であるが、
治る見込みがないと医師は知っていて、それは患者を傷つけるだけということを
楽にならないということをどう伝えるか医師は毎回思い悩む。

たしかに奇跡もないわけではないのだから。

医師側のリアリティに立ったこちらのドキュメンタリーは、望みが少ないことを、伝えることに細心の注意を払い、死の迎え方の決断を迫る
姿を追い、
倫理的にグレーな橋を常に渡る医師たちの苦しみがひしひしと伝わる映像が流れる。
患者の事を思いやり、患者の親族を傷つけないための苦しい選択を見せ続ける。

病気と闘うというのが美しいとか正しいという価値観で、患者は心で涙を流す。
現実と向き合いたくないという家族の気持ちで、患者の苦痛が増えていくことを幾度となく見てきた医師だからこそ、伝えられる言葉があったりもするのだ。

私も父親と義母を癌で亡くした経験があり、実際に決断を迫られる経験をしていた。

義母は元々延命は絶対にしないでと願っていたのを知っていたので、管を繋がないという風な結論は決まっていたのだが、それでもその言葉を医師にその決断を伝える事にかなり苦しんだのを覚えている。

患者が死を迎える時、それは同時に残された者たちも一度小さな死を体験する。
それを後悔のないようにサポートするのが医師の立場なのかもしれないと、この作品を通して知ることができた。

そしてその時が来た時、信頼できる医師を選ぶことも最期を迎える上でとても大切な事なのだろう。
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