さむ

武曲 MUKOKUのさむのレビュー・感想・評価

武曲 MUKOKU(2017年製作の映画)
4.0
「武曲」とは、北斗七星の柄の先端から2番目に位置する恒星「ミザール」の別名であるという。ミザールのすぐ脇にはアルコルという暗い星があり、この2つの星は馬と騎手に例えられることがあるらしい。まるで、研吾と融、そして研吾と将造のようである。
恒星は自ら光を発することができるが、その中心部で原子核融合を常に続けている。それは、研吾、融、将造の、強烈なエネルギーの爆発とよく似ている。

星と星を人間が勝手に結び、星座という物語を作っていく。孤独な恒星たちを結びつけ、星座にしたのは光邑和尚である。

ここ数年で多くの喪失体験をした自分にとって、病室での病人の髭剃りも、墓場での老婆の罵声も、どれももはや感情を揺さぶられないほど慣れっこになってしまった。
「研吾」的な時期、「融」的な季節は、もうすでに、とうの昔にやり過ごしてしまった。苦しい過去、苦い過去。

では自分が今この映画に出会った意味は・・。

たぶんそれは、自ら光を発する力を持ちながらも宇宙の闇の中で孤独に足掻き続ける恒星たちが、星座という自分の居場所を感じられるような働きをしていくことなのだろう。
かつて自分がそうしてもらったように。

「光邑和尚」的な季節を迎える時期が来てしまったのかもしれない。
さむ

さむ