イホウジン

人生フルーツのイホウジンのレビュー・感想・評価

人生フルーツ(2016年製作の映画)
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あまりにもファンタジーが強すぎてかえって不気味。
意図的に説明されない部分がある。

生活の質の高さは本当に素晴らしい。半時給自足的な生活をニュータウンの中で実践しているということも次世代への希望と受け取れるし、その生活の中で生まれる夫婦の間柄も都会的な無機質な関係とは一線を画すものである。料理も美味しそう。

しかしながら、これらはあくまで“理想”であるということを暗に突きつけられていたように感じた。所詮は富裕層の楽しみ。そして戦争の気配と古いジェンダー観。
特に面を食らったのは妻が買い出しで野菜屋だけで1万円使った場面である。総合スーパーで1万円はまあ想定内だが、食材にこだわりを持とうとするとここまでお金がかかるのか。当初は自然派な生活と聞かれてさぞかし素朴なものを連想していたが、そんな理想はことごとく壊された。よくよく考えてみると趣味はヨットだし土地もニュータウンにしては広いし、庶民には程遠い世界である。
また、度々夫の戦争にまつわる話が登場したことも少し気になってしまった。言ってしまえばエリートなホワイトカラーとして戦地に行かずに“活躍”した兵隊であったのは伺えるが、その事に関する言及が皆無だったことに違和感を感じた。なんの疑いもなく海軍の歌を歌うし旗を庭に掲げる、些細な行為かもしれないが、戦争に大してあまりにも無邪気な心境だったのかもしれない。
性別役割分業,父権の強調など特に夫のジェンダー観が古い描写が目に付いた。終盤に妻の主導で枝が伐採されるシーンは皮肉にも女性解放の映画の一部に観えてしまった。

今作には孫が登場するが、祖父(母)の教育方針は「プラスチックを使うな」「外食するな」らしい。
私には無理だ。
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