ベビーパウダー山崎

スタントマンのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

スタントマン(1980年製作の映画)
4.0
野良犬が自分の性器を舐めまくる無駄なオープニングからスタントマンに転じた人殺しの青年がキチガイ監督にギャラ交渉し続けるというよくわからないラストまで、はたしてこれは喜劇なのか悲劇なのか、それともトラウマを抱えた男女のドラマ、もしくは反アクション(反70年代アメリカ)映画なのか一向に判断がつかないまま「映画内映画」と「映画のなかの現実」を漫☆画太郎的な展開で行ったり来たりする異常な130分。
ベトナム帰りで頭がおかしくなっている若者も戦争映画にのめりこみ過ぎてリアルと虚構の境目を見失っている監督も老婆メイクまでしながら映画業界へ身も心も捧げている女優も誰一人として感情が掴みにくく、そのコントロールできていない「映画」をあえて歯止めなくさらけ出し、暴力とpassionで私たちを挑発するリチャード・ラッシュはやはり「魂」で映画を撮っている信頼できる作家。見る側がこれ以上ついていけない、と呆れさせる表現こそ崇高だと俺は思う。