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スタントマンのghostboatのレビュー・感想・評価

スタントマン(1980年製作の映画)
4.0
傑作。警官に追われている殺人犯が逃げ込んだ先が血みどろ戦争映画の撮影現場だった、というメタ的な序盤からしてすでにクセが強すぎるのだが、いつの間にか殺人犯がスタントマンとして活躍しだしてからいよいよ物語の方向性がわからなくなってきて困惑するばかり。主人公がスタントするアクションシーンにいたっては舞台裏であることを忘れさせるような迫力っぷり。というかまるで映画本編であるかのように見せてる。

そもそも映画の舞台裏を描くこと自体がすでにメタ的なのに、俳優の裏方であるスタントマンを描くというメタの重層っぷりはいったい何なのか。

おそらくピーター・オトゥール演じる監督のキチガイっぷりが一番の見どころで、テスト試写の際に主演女優のベッドシーンを女優の両親に見せる非道っぷりが強烈すぎる。映写機から発する光をきれいに撮ってる一方で、その手前に両親の困惑した顔を配置させてる無茶苦茶な構図には笑うしかない。(映写シーンがある映画は大抵面白いの法則がまたしても証明された。)

また殺人犯の主人公がベトナム戦争帰還兵という設定があるが、この監督のキチガイっぷりを際立たせるための単なる見せかけのネタになってるのが興味深いと思った。70年代に語られてきたPTSDネタへのアンチテーゼでしょうか。ラッシュらしい反骨精神。

元々本作は、アーサー・ペンやトリューフォーに話が持ち掛けられていた模様(業界の噂話)。ラッシュも一度は断ったらしいが渋々承諾しただけの雇われ仕事だったらしい。そんな雇われ仕事なのにラッシュが書いた脚本がコロンビア側に却下されると、ラッシュはむきになり自ら権利を買い取り同意してくれるプロデューサーを探し回ったという。ラッシュの本作にかける熱意がよくわかるエピソード。最終的にはメルヴィン・サイモン(『ポーキーズ』『マイ・ボディガード』『夕暮れにベルが鳴る 』『UFOria』)が支援してくれて共同製作に漕ぎつけたとか。配給は20世紀フォックス。

アメリカでは相当なカルト作品として扱われてるらしく、調べるとこんなに長く書き綴られた記事が出てきた。やはりカルトですね。。。
https://cinephiliabeyond.org/faustian-fall-guy-richard-rushs-stunt-man/ 
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