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太陽の塔のKHのレビュー・感想・評価

太陽の塔(2018年製作の映画)
3.0
大阪万博(1970)の象徴であり、岡本太郎の代表作である「太陽の塔」に迫るドキュメンタリー。
経済成長をし続ける当時の日本はファンタジーに包まれた世界だったのだと改めて感じた。外国人でさえも日本人にはファンタジーの対象(テレビの世界)であった当時において、進歩を絶対的善として大衆に示すことがゴールだった当時の万博で、それを嘲笑うかのようにそびえ立つ、グロテスクで意味から断絶された存在「太陽の塔」。(それを安易に否定するのではなく皮肉の象徴として存在させる)もちろんこれには、その進歩の裏で覆われた公害や内戦と、調和という妥協の産物を意識したものと思われる。
ただ現代の文明の発展を肉体性の喪失として否定し、狩猟採取時代への憧れを訴え続けるのは芸術としては正しいが、空虚な「アート」の域を出れないという限界も感じた。だからこそ永遠の純粋さを保てるのかもしれないが。
ここまでは良いが、このドキュメンタリーで語る人たちが原発の話になると余りに断定的で陳腐すぎる。
原子力発電に対して原爆などのストーリーを結びつけて否定することに、そろそろ疑問を持つべきだと思う。原子力発電は倫理でなく技術革新の問題として解決されるべき性質のものと自分は思っている。
それらを否定する事自体は人それぞれだが、あまりに断定的すぎると思う。左派的な考えはその矛盾にぶつかって葛藤するからこそ美しいのであって、それを断定してしまい、結果として行き過ぎたリベラルは危険な自己否定に繋がりかねない。特に若いアーティスト集団はあまりに稚拙というか、無垢だと思う。無垢な気持ちを活動の核とするのは良いと思うが、それをいかに他の人々に伝えるかという工夫こそが表現する事だと思っている。
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