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雪女のhorahukiのレビュー・感想・評価

雪女(2016年製作の映画)
3.5
小泉八雲の有名な怪談『雪女』の映画化!
何ともスコアつけるのが難しい映画でした…。

有名ですけど一応あらすじ…
吹雪の中、山小屋に避難した茂作と巳之吉。その夜、茂作の上に覆いかぶさる女を巳之吉は目撃する。「このことを他言すれば殺す」と言い残して女は去り、茂作は冷たくなっていた。
その後、巳之吉は山の中で雪と名乗る美しい女と出会い結婚するが…という話。

冒頭のシーンの美しさは素晴らしい!
あえてのモノクロ映像で魅せる、雪女の妖艶さとこの世ならざるものとしての、おどろおどろしい異様な雰囲気を同居させた素晴らしいシーン。和楽器にこだわったBGMも、単なるホラーではなく日本の「怪談」としての空気感をうまく表現できてるし、モノクロ映像のおかげで、雪女が現実ではなく悪夢だったのではないかと錯覚させるようなところも良い。

その後はカラー映像に変わり、日本的な風景を絵画的に切り取ったような美しいシーンが続きます。ただ風景を映すだけでなく、それにより時間の経過や季節の移り変わりを表現してるのがうまいですね。彼方と此方の往来を象徴するような渡し舟というのもわかりやすくて好きです。

多分描きたかったのは自然と人間の共存や異文化交流の難しさ。雪女は小さな村にやってきた異人。だからこそ、村人から悪い意味で注目の的となり、村で起こる連続死亡事件の犯人として疑いをかけられる。余所者が村社会に馴染むことの難しさを『雪女』という巳之吉と雪の悲恋の物語に落とし込んだことは現代的で面白いと思いました。

ただ重要なことがあちこちで抜け落ちてしまっている印象。傑作になり得た作品だと思うので本当に勿体無いです。表情の演技や行間から匂わす演出は凄く良いのですが、肝心なところはセリフで済ませたり、場合によってはほぼ描けてないように感じました。

まず舞台となる村という共同体が描けてないせいで、村に馴染めない異人というものがイマイチ伝わってこない。ここは2、3のセリフによって伝わってくるのみで、描写が非常に薄く感じます。そして悲恋の物語でありながら、始まりと終わりがアッサリしすぎているのも気になりました。巳之吉の葛藤については、後半はその表情からもしっかり描けているように思いましたが、雪側の感情が全く読み取れない。あえてなんでしょうが、テーマ的に描く必要があったように思います。「あなたを知ろうとすることで自分を知っていた」というセリフは凄く良かったと思うんですけどね。他にも色々あるんですけど、雰囲気が大好きだっただけに冒頭で感じた期待は上回らなかった感じですね。それだけ冒頭が凄く良かったんです。う〜ん勿体無い。
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