ノラネコの呑んで観るシネマ

八重子のハミングのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

八重子のハミング(2016年製作の映画)
4.4
ああ、これは心を打つ素敵な映画だ。
若年性アルツハイマーに罹患した妻と、彼女を12年間に渡って介護した夫の物語。
現在の夫の講演を通して、彼女との様々な思い出を描き出す。
このテリングのスタイルによって、良質なドキュメンタリーを観たようなリアリティを感じる。
徐々に普通の生活ができなくなってゆく、認知症の現実は過酷。
若年性の場合は、体は元気だからなおさら。
でも、このご夫婦の場合はお互いを想う気持ちだけでなく、周りの人たちにも恵まれた。
いや二人の生き方が、周りを自然に導いたとも言えるかも知れない。
夫婦に辛辣な言葉を投げかける人もいるが、映画はそちらは深く追わない。
夫の心に残るのは、二人を気遣い支えてくれる人たち。
だから観終わって、悲しみよりも深い愛を感じる。
色々なケースがあるだろうが、少なくともこのご夫婦はとても幸せな人たちだと思う。
妻を介護する夫の話は「愛、アムール」が記憶に新しい。
両作共に十分な実感を伴う優れた作品だと思うが、自分がどちらの人生を送りたいかと考えれば、答えは明らか。
私のような独り者じゃなく、家族のいる人には更に響くだろう。
生っぽいユーモアがあるのもいい。