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鉱 ARAGANEのへむへむのレビュー・感想・評価

鉱 ARAGANE(2015年製作の映画)
3.9
年末、待ちに待った小田香、一発目。
カフカ「バケツの騎士」を原作に撮ろうと始まるやいなや、ボスニアの炭鉱に潜り込んだ彼女を魅了し企画変更され作られたという本作。
等身大の視点からみえる地下深くの洞窟は光の届く上界との境目が曖昧になりどこで何をどう捉えているのか判らなくなる。

上映後に姿を現した監督はadidasのキャップを脱ぎボーイッシュな髪を掻き分け観客からの質問に端的に応えていく。まるで炭鉱に先程まで居たかの様な身軽さにこちらがたじろぎそうになる。

後続でのインタビューでも仰っていたが、「自分が見たいものを撮る」に最終的には回帰すると。師匠タル・ベーラと共にショットの良し悪しを見極めるにも、フィールドレコーディングで撮り溜めた音源やふと気を惹かれて捉えていた映像を挿し込むにも、彼女の言葉にならない感覚に従って作品に導入していると思うと、対象にカメラを向けることは一種の暴力性を伴うことにも頷ける。
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