寝るのだいじ

闇の子供たちの寝るのだいじのネタバレレビュー・内容・結末

闇の子供たち(2008年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

臓器提供されるのは富裕層、するのは貧困層、という対比が国レベルで行われた話。実話に基づく。

公開当初はノンフィクションとされていたことが引っ掛かる。性犯罪、児童虐待、人権侵害な臓器提供、タイへのイメージが悪くなるからと批判を受け、「フィクション」と変更した模様。どこの国にも闇の犯罪はあるし、現実は知らないといけないと思うが…
脚色はあれど、ビジネスモデルなどの本質的な部分は現実に基づいてるものを感じた。


貧困層の子供達が集められ、小児愛者の性欲発散に遣われる。運が良ければどこかの養子、運が悪ければエイズなど感染症により死亡するか、もしくは臓器移植のドナーとして生け贄にされる。

NGOの人がおかしい。自分達で保護できなかったから臓器提供の生け贄が生まれていることも知りながら、手が回らないからと一旦この件を断る。
なのに、もう出来上がっている闇ビジネスに無知のまま立ち向かおうとするのが違和感しかなかった。善人ぶりたいだけでは。
従って日本人ボランティアが、心臓移植を受ける家庭への取材の場でしゃしゃり出て、感情論で侮辱ともとれる暴言を吐いているのがイライラした。

小児愛者はどうしてそうなってしまうのか、理論的には立証されているが、同性愛が法で厳罰されており強制ホルモン剤を飲まされる過去のイギリスのように、特効薬になりそうな何かないのか。
全く減らないし暗数が多すぎる。

しかし本作品の趣旨である「死にそうな人の為の生け贄」はとても難しい問題だ。
アメリカなど移植手術が有名な国では、年単位でのドナー待ち、渡航と宿泊など旅費、膨大な手術料、などとても一般人には払えない。そもそもドナー待ちの時点で持ちこたえられず亡くなる患者も少なくない。
倫理観を捨てれば、本作でのビジネスモデルの、売り飛ばされた行き場の無い子供を、死んでいなくてもドナーにする、というのは合理的でスピーディー。子供のためなら悪にでもなる親の気持ちも共感できてしまう。

本作への雑誌か何かのインタビューで、某大学医学部教授が「我が子の為に他所の子供が死ぬことに賛成する親はいない」と発言したとネットで見た。家族いないのかな、としか思えなかった。
背に腹はかえられぬ、断腸の思い、この事ではないのか。
そんなことを宣うのなら、闇ビジネス利用のメリットである治療までのスピーディーさと料金設定を、合法的に倫理的にも正しいやり方で確立させてくれないか。
これが本作の問題提起ではないのか。
と憤ってしまった。
 

好きな漫画に「悪には悪の救世主が必要」という言葉があり、正にその通りである。
病気するのは悪いことではない。ただ闇ビジネスにしか頼れない人はごまんといる。日本の若者が闇バイトをするのだって、法に触れることを知らないという理由はメディアが作っているとしか思えない。居場所が無い若者がトー横に集まることからも、とにかく現実から脱したい、楽になりたいくらい、現実が厳しすぎるのだ。
犯罪を肯定してはいない。ただ、背景を知ってほしい。どこを正せば良かったのか、考えてほしい。