るる

ニーゼと光のアトリエのるるのネタバレレビュー・内容・結末

ニーゼと光のアトリエ(2015年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ロボトミー手術、いやーーー。勘弁して。『カッコーの巣の上で』が有名だけども。ノーベル賞が与えられてるってのが闇だよな…

1920年代アメリカの医療を描いたドラマ『the knick』の終盤にも精神病患者が登場したけれど、シーズンが打ち切りにならなければ、ロボトミー手術についても描かれたんだろうなと思いを馳せた。

精神病院、女性ひとりで奮闘、呆れつつ心配する夫、

タネはゴミじゃない、植えるものだ、人間的な、あまりにも人間的な、

裁縫でもするのかと見下される、女性差別があったことを示しつつ、不適切な発言だったなときちんと言葉にしたり、きちんと現代的視点で作り込まれた脚本だと思った、
怒鳴る男性看護師を諌めながらも、癒しの技は女性の技、という描き方をせず、プロフェッショナルとして描いたあたり、ものすごく丁寧につくられていることが伝わってくる。

まあ大変な環境で、おかしくなっちゃいそうだけど…人間をあくまで人間扱いするのって、時にめちゃくちゃ難しいのだと思う、認めなくちゃいけないと思う、
あのアトリエの先生みたいな、絵を教える、ときどき寄り添い交流する、というような立場ならともかく、共に暮らし、世話をする、介護する、私にはできない仕事だと感じる、どっちかというと患者になる可能性のほうが高い気がする、こわい、つらい、

暴力他、排泄物で壁に絵を描いたり、全裸で庭を歩き回る男は描かれたけど、セクシャルなことについては描かないのかな、ミニスカートから覗く膝小僧に目をやるくらいか、と思ったら、患者もといクライアント同士のセックス、しかし原始的で素朴で微笑ましい営みとして、
制御されない性欲、個人的には一番キツイ部分、抵抗を感じる部分なので見ずにすんでホッとしたけど、女性医師や女性看護師や女性ボランティアが患者から暴力を受けて挫けてしまう現実も描いて欲しかった気がする、でも偏見の助長に繋がるし、なくて良かったか、

光の中に神を見出す、絵を描く、綺麗だと思う服を着てみる、ワンピースを着てみる男、なんて自由、
自然に触れるうちに絵の中に記号が現れ始める、

手紙の返事、私を男だと思ってる、ユングも女性差別を、と笑う、ちょっと面白いけど、フロイト、ユングはなあ、未だに影響力があるのがまた、なあ

動物は最高のセラピストです、規則だなんだと潰しにかかる同僚上司に対して、ものすごい気骨、

開いた窓から外が見える、いつか窓が開く、簡単じゃないけど、
画家じゃない、労働者、

素朴な台詞にハッとさせられる、

煙草を吸いながら、クライアントと看護師のロマンチックな瞬間、人間だもの、恋だってする、
祭りを楽しむ、名医たちが見たら驚くだろうな、皮肉、
奨学金がもらえたからロンドンへ行く、しばらく来れない、でも、必ず戻る、混乱してしまったラファエル、彼に関わらないでと叱責するニーゼ、あくまで治療、実験でもある、私情に溺れてはならないのだと、

祭りの終わり、光に照らされたステージ、
殺された動物たち、泣き叫ぶ、こんなの患者じゃなくても狂乱するよな、
なぜ与えたのに奪う?殴る、殺しかける、あんなに美しい絵を描く青年がアイスピックで脳を刺される、

医者って、外科医って、究極的なところで人間を人間として見ていないんじゃないか、人間の捉え方がズレているのでは、と思う瞬間があるけれど、どうなんだろうな実際、人それぞれ、人の概念は違うんだろうなとか

立派な展覧会、無意識とは、言語とは、

あの病院、あの状況からどうしたんだろうか

最後の本人写真と映像、重みが凄かった。
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