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ニーゼと光のアトリエの海のレビュー・感想・評価

ニーゼと光のアトリエ(2015年製作の映画)
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幸福が持続しないことは誰しも知っている。それなら、不幸が死ぬまで続くように思えてしまうのはなぜなんだろう。美しいものに触れ、あなたに触れられて、からだじゅうに空けられた穴をふさぐ。どんなに救いようがなくても、祈るために手を組めるかぎり、生きていこうとしているんだ。とっくに壊れきった心の前で、指と指を重ねる。濡れた筆先が、自分自身のからだの表面を、愛するひとのからだの内側を、すべり降りてゆく。交ざりきった絵の具が、体温に溶かされてこぼれてゆく。わたしたちが探し、願い続けているものは、彼女たちと何も変わらない。ひとがこんなに残酷だとは思わなかった、ひとがこんなに美しいとは知らなかった、この闇の深さに、たった片方の腕さえ浸すことの叶わなかったわたし自身が、きっとあのときの影に落とされた光だった。
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