エリオット

大幹部 無頼のエリオットのレビュー・感想・評価

大幹部 無頼(1968年製作の映画)
3.9
無頼シリーズ第2作。。
監督は前作でチーフ助監督だった小沢啓一。これが監督デビュー作。ちなみに今作のチーフ助監督は澤田幸弘。
第1作が「無頼より 大幹部」で今作が「大幹部 無頼」とタイトルが非常に紛らわしいが、冒頭、前作のダイジェストが流れるのを受けてのまさに続編。

昭和30年ころの話。
藤田五郎(渡哲也)は雪子(松原智恵子)と夢子(松尾嘉代)の待つ青森弘前で再会を果たすが夢子は病気で臥せっていた。五郎は夢子の治療費を工面するため懸命に働くが結局それでは足りず、金のため、横浜を縄張りにし和泉組という組と抗争中の木内組木内(内田良平)の助っ人になる。
そこからはいつものヤクザ映画…

前作より映像のスタイリッシュさは後退したものの、五郎を取り巻く人物の人間模様を描く点にかけては本作の方が丁寧。

弘前で地元のヤクザにからまれているところを五郎に助けられた踊り子(芦川いづみ)は五郎のことが忘れられないが、その後、偶然横浜で五郎と再会したときには既に身を堕として娼婦になっていた。その後、乱闘で怪我を負った五郎を匿って介抱するが、五郎のためを思い自身の情は堪えて雪子を呼びに行く。引退間近の芦川いづみのその切ない表情が泣かせる。

その他、抗争相手の組の代貸が五郎の旧知の先輩である二谷英明で、妻子のために堅気になろうとした矢先に抗争が始まったり、二谷の妹(梶芽衣子)と五郎側の組の下っ端ヤクザが恋人同士だったり、芦川いづみの今の情夫(田中邦衛)が五郎に前作で殺された組長の舎弟で五郎の生命を奪おうと付け狙ってたり…と様々な人間関係が複雑に絡みあいながら話が進んでいくあたりが面白い。

ラストはドブ川でのヤクザの乱闘とドブ川の上の校庭で行われている女子高生のバレーボールが交互にカットバックされるシュールな展開だが、もし機会があれば観て損はない作品だと思う。
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