ゑぎ

王冠の真珠のゑぎのレビュー・感想・評価

王冠の真珠(1937年製作の映画)
3.5
 冒頭はギトリとドリュバックの会話シーン。現代(1930年代当時)の歴史家のギトリが、妻(恋人?)に数奇な真珠の運命を語り始める場面だ。同様に、同じ物語が、英国王へその侍従からと、教皇へ秘書長から、語られるという体裁をとっている。尚、ギトリは、フランソワ1世、ポール・バラス(フランス革命期の政治家)、ナポレオン3世の4役(現代の歴史家役を含めて)。ドリュバックは、メアリー・スチュワートとジョセフィーヌを加えた3役を演じている。

 序盤の中心的人物は、カトリーヌ・メディチと云っていいだろう。16世紀のお話だ。ローマ教皇が、お転婆な少女カトリーヌを修道院から連れ戻すシーンで出て来る修道女の中に、ポーリーヌ・カルトンがちらった見えたと思う。教皇はカトリーヌのため、従者に真珠を探すよう命じる。彼が真珠を探し回るシーケンスでは、アビシニアの場面が尺を取って描かれる。アビシニアの女王はアルレッティ。本作中、一番の肌の露出度で、大きなヘビを嬉しそうに持つ。アルレッティの側近はダリオがやっている。

 これと同時期のフランス王朝では、アン・ブーリン(エリザベス1世の母親)がアンリ2世の英語の家庭教師をしており、アンリ2世の父親のフランソワ1世-ギトリが、アン・ブーリンを口説くシーンでは、息子を部屋から追い出して、2人きりになる。この場面のギトリの好色な感じがいい。

 アンリ2世とカトリーヌ・メディチとの結婚式は、マルセイユで行われる。船から降りてくる、大きな輿に乗った教皇。こゝは、なかなか製作費のかかったシーンに見える。本作でもっともスペクタクルを感じる場面だ。

 この後、英国に場面が移ると、ヘンリー8世-リン・ハーディングが教皇に腹を立て、カトリックから新教に改宗すると云い出す(カトリーヌを英国でなく、フランスに嫁がせたことに腹を立てている)。また、アン・ブーリンとヘンリー8世とジェーン・シーモア(アン・ブーリンの次の王妃)の食事シーンなんかもある。

 また、教皇からカトリーヌ・メディチに渡された真珠のネックレスは、その頃フランスにいたメアリー・スチュワート(メアリー・オブ・スコットランド)へ渡る。その後、イングランドで、エリザベス1世によって、メアリー・スチュワートが処刑される時に、真珠は盗賊に盗まれる、という運命をたどるのだ。

 さらに、ジャン・ルイ・バローがナポレオン・ボナパルトを演じていたりして(ジョセフィーヌはドリュバック)、時代の変遷をごくごく短いシーンで見せて行き、現代(1930年代当時)に至るという構成だ。

 終盤の現代のシーケンスでは、真珠のオークション会場でレイミュが登場し、250万フランで落札する。レイミュの後をつけるドリュバック。彼女は、レイミュを誘惑し惚れられるよう仕向けるのだが、しかし、あらかじめギトリに云われている通り、副詞のみで会話する、というのが可笑しいところ。最終盤は、豪華客船ノルマンディー号が舞台で、こゝでもメイド役でポーリーヌ・カルトンが出て来る。船内の食堂でのディナーの場面で、ギトリとドリュバックらが歩いてくるのを延々と後退移動で見せるショットが、ショットとしてはもっともゴージャスかも知れない。レイミュとメイドのカルトンのやりとりも副詞だけ。さて、真珠は結局どうなるか、という部分でのオチは、予想の範囲だ。しかも画面もチープ極まりないのだが、それは、ワザとチープにして、すかしているのだろう。
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