みんと

毒薬/我慢ならない女のみんとのレビュー・感想・評価

毒薬/我慢ならない女(1951年製作の映画)
3.8
サッシャ・ギトリ作品2作目を鑑賞。

冒頭、ギトリがキャスト、スタッフを紹介していくお約束のタイトルロールが微笑ましい。
…とは言え、本編は実にモラルに反した超ブラック・コメディ。

お互いに殺意を抱くほど冷めきった結婚30年の倦怠期の夫婦。妻は毒薬を手に入れ、夫は敏腕弁護士から殺人を正当化する方法を聞き出し実行に移す。
果たして夫婦の顛末は……。

とてもテンポが良く、とんちのような屁理屈のような理屈でグイグイ引き込む。
エスプリが効いてるなぁ…
そして、薬屋、花屋、ラジオ、噂、子供たち…と、散りばめられた仕掛けが緻密で実に巧妙。

それにしても二人が結婚したのが不思議。食事中はほとんど口を聞かない。妻はワインを水のように呑み、口を開けば悪態ばかり。夫も常に仏頂面、決して好感の持てるタイプじゃない。
観る側にさえ殺人を正当化させるかのビジュアルとキャラクターは絶妙だった。

寂れた村に活気を取り戻す事件として、村人達の倫理観なく喜ぶ様子なんてシニカル極まりない。それでいて、まるでハッピーエンドのような錯覚は、タイトルロールの温かみとカラッとした描き方も含めて計算通りなのかも。

粋映画好きとすれば『これで三度目』のような粋さが感じ取れなかったのは残念だけど、不思議と強引に納得させられるワードセンスはやはり流石!
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