ルサチマ

映画が時代を写す時 侯孝賢とエドワード・ヤンのルサチマのレビュー・感想・評価

4.2
エドワード・ヤンと侯孝賢の対比的な描き方がひょっとするとヤンをアメリカナイズされた台湾人という印象を強めすぎてると思うし、実際是枝はそういう文脈でヤンを意識してるんだろうが、とはいえ2人のメイキング場面が映されているという意味で貴重なものだ。そして二二八事件によってヤンと侯孝賢の関心が重なるという見せ方も、中編のテレビ制作ではあれ、きちんと取り上げられている点は評価できる。だが、何よりこのドキュメントで一番大事だと思えたのは、ヤンが「大切なことは人はみな同じ人間であるということです。もしあなたが自分のことをある特定の国の人間だと考え、ストーリーを作ったとしたら、その映画はきっと面白くないでしょう」と語っていたことだった。全くその通りで、ヤンの映画を時代や国籍とともに変化していく人間社会を描いたという見方は違うはずだし、そこにヤンの現代に通じる批評性がある。
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