まさか

At the terrace テラスにてのまさかのレビュー・感想・評価

At the terrace テラスにて(2016年製作の映画)
4.3
第59回岸田國士戯曲賞を受賞した『トロワグロ』を、演出家本人が、舞台の時とまったく同じ俳優で映画化した作品。

山内ケンジは舞台と映画を自由に作り分ける才能として稀有な存在だ。映画『友だちのパパが好き』があまりにも面白かったので今作にも興味があったが、期待以上だった。いずれの作品も、登場人物をにっちもさっちも行かないどん詰まりの状況に追い込む手つきが素晴らしい。下らなくてバカバカしく、取るに足らない話であることも共通している。

前作は親子ほども年の差のある男女の痛々しく愚劣な恋愛話だった。サラリーマンの男と女子高校生が、彼女の執着にも似た思い込みによって男女の関係になり、当然ながら周囲を巻き込んで、自分たちを取り巻く人間関係を次から次へと壊していく。

本作にもまた粗忽な人物ばかりが登場し、小さな我欲を丸出しにしてやりたい放題を押し通す様子が、清々しいまでに堂々と描かれる。「100%富裕層向け映画」というキャッチコピーがとてもステキに不穏な空気を感じさせる。これほどまでに下品で、これほどまでに面白い作品に出会うことは稀である。人の性(さが)のバカバカしさ、可笑しさ、哀しさを表現し尽くしているという点で他に類を見ない。いまだに平岩紙の白くて細い二の腕が目に焼き付いて離れない。
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