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オリエント急行殺人事件のEyesworthのレビュー・感想・評価

オリエント急行殺人事件(2017年製作の映画)
4.5
【名探偵ポアロの信念と揺らぎ】

ケネス・ブラナー監督×アガサ・クリスティ原作のミステリー小説を映画化した名探偵エルキュール・ポアロシリーズ1作目。 1974年に同タイトル『オリエント急行殺人事件』が先駆けて制作されているのでリメイクとなる。ジョニー・デップ、ミシェル・ファイファー、ジュディ・デンチ、ウィレム・デフォー、ペネロペ・クルスら豪華俳優陣演じる
乗客達を相手にケネス・ブラナー監督自身が主演エルキュール・ポアロを演じ、列車内で起きた殺人事件の解明に挑む。

〈あらすじ〉
イスラエルでの仕事を終えたエルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー)はイスタンブールで休暇を取る予定だったが、英国領事館から急遽依頼が入り、寝台列車オリエント急行に乗ってロンドンへと戻ることに。一等車両にはポアロの他、様々な職業・国籍の乗客が乗り合わせ、季節外れの満席となっていた。その中の1人、アメリカの美術商で富豪のラチェット(ジョニー・デップ)がポアロを見知り、話しかけてきた。彼は脅迫状を受け取っており、身の危険を感じてポアロに護衛を依頼したのだった。しかし、ポアロはラチェットの態度に良い印象を持たず、彼の依頼を断ってしまう。そんなある時、列車は雪の吹き溜まりに嵌り、立ち往生してしまう。その翌朝ラチェットの遺体が彼の寝室で発見された。名探偵ポアロは残された証拠品から謎を解明し、12人の容疑者の中に潜む殺人犯を見つけ出すことはできるのか…?

〈所感〉
アガサ・クリスティの小説は『そして誰もいなくなった』くらいしか見たこと無かったので、エルキュール・ポアロの人物像なども全く知らなかったが、例に漏れずとても面白い探偵だった。疑い深く誰も信用しない性格でありながら、同時にユーモアや愛嬌も持ち合わせており、甘い物に目がない点も好印象を与えてくれる。このように人間的に全く隙の無い老人に見えるが、「この世には善と悪の2種類しか存在せず、その中間は存在しない」という善悪二元論に基づいた観念で事件に対処している彼にとって、この事件はあまりにも自身の信念を揺るがす事態であったに違いない。この作品のオチは有名なのだろうが、私は全く知らなかったので非常に驚いた。最後の晩餐的なショットが古典的ながらとても良い。それぞれの人物が部分的ながら掘り下げられていて、それらが結集した結果これだけ面白い事件が起きるのか、と流石ミステリーの女王の名作ミステリーだと唸らされた。次は続編『ナイル殺人事件』も見てみたい。
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