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オリエント急行殺人事件のKUBOのレビュー・感想・評価

オリエント急行殺人事件(2017年製作の映画)
4.0
12月最初の試写会は、ケネス・ブラナー版「オリエント急行殺人事件」。監督のケネス・ブラナー、日本語吹替を担当した草刈正雄、山村紅葉登壇による舞台挨拶付きスクリーニング試写会にて鑑賞。

上映前のトークの中でケネス・ブラナーが言っていたが、「オリエント急行」も「イスタンブールの駅」も全て実際に山の上に作って走らせたという車内・車外の映像は美しく、豪華絢爛。特に広大な風景の中を走る姿は、CGが使える今だからこそ、74年版を大きく上回る美しさだ。

結末こそ変わらないが、ストーリー展開が結構変わっている。ケネス・ブラナーが「原作を twist した」と言っていた通り、ポワロが走ったり、銃撃があったり! 旧作を見ている人にはかえって驚きのある展開。

特に変わっているのが後半。旧作ではポワロがひとりずつ同じ部屋に呼んで話を聞いていたが、確かに単調で映画的にはダレた。そこを、わざと場所を変え、アングルを変え、美しい山々をバックに写したり、視覚的に変化を与え、飽きがこないようにしたのは上手い。

また、謎解きの結末は同じでも、その過程を変えたのは、私は評価する。舞台は1930年代だが、見ている我々は2017年である。死刑制度自体が世界の趨勢では消えつつある昨今、いわんや「私刑」である。その結論に辿り着くまでを、原作通りのポワロひとりの謎解きとせず、ただ聞いていただけの乗客たちに、役割を与え、ポワロを悩ませ、苦渋の決断とした改変は、現代に「オリエント急行の殺人」を発表するに相応しい改変だと思う。

(私見であるので、ディープなアガサ・クリスティーファンが怒っていても我関せず)

ジョニー・デップ、貫禄ある悪者ぶり。「スターウォーズ」のレイ(デイジー・リドリー)はクラシックな髪型にすると美人が際立つ。大スターたちに見劣りしない存在感!

ミッシェル・ファイファー、ペネロペ・クルス、ウィリアム・デフォー、ジュディ・デンチ、etc。74年版にも見劣りしないキャストの面々。

何より、ちょっと若返った感じのポワロを演じるケネス・ブラナー。ちょっと走ったり、少しアクションもしたり、ただしガイ・リッチーの「シャーロック・ホームズ」みたいにひどいことにはなってませんからご安心を。

ラストには、早くも次回作につながるキーワードが出てきますが、70年代と同じ流れ。楽しみに待つことにしましょう。

ケネス・ブラナー版「オリエント急行殺人事件」は、アガサ・クリスティーの原作を21世紀に合わせた形で映像化したエンタテインメント作品。初めて見る人にはもちろん、旧作を見たオールドファンも新鮮に楽しめる作品になってました。オススメです!

(最近のハリウッド大作にはキャストに黒人とアジア人を一人ずつ入れるという偽善的配慮が当たり前になっているが、74年版でショーン・コネリーがやった役を本作ではレスリー・オドム・ジュニアが演っている。1930年代のオリエント急行の一等客室に黒人が乗るなんてことは歴史的にありえない。こういう無理矢理ってのはどうなんでしょう?)

(映画の後で食事に入ったレストラン。隣の席に座った女子2名もFilmarks のユーザーのよう。同じ映画を見てきたようで「オリエント急行殺人事件」について語っているのだが、出てくる名前が「佐藤浩市」だとか「ニノ」だとか。ああ!「三谷幸喜版」と比べてるのかと一瞬間をおいて理解したが、74年版と比較していたおじさんとしては、時の流れを感じるな〜(^_^))
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