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オリエント急行殺人事件のumisodachiのレビュー・感想・評価

オリエント急行殺人事件(2017年製作の映画)
3.2
言わずと知れたアガサ・クリスティの傑作。ドラマも含めると何度も映像化されている。今回は、イギリスの名優ケネス・ブラナーが主演・監督を務めた。

本作の魅力は、なんといっても超豪華なキャスト陣。殺されるラチェットを演じるジョニー・デップをはじめ、絢爛豪華な実力派俳優たちが一堂に会している。

見事な衣裳、贅沢な車内および車外の映像も見どころ。美しく雄大な景色の中で描かれる室内劇は、なんとも言えずゴージャスでウットリできる。

もはや原作を読んだのが遥か昔なので、当然オチは知っているものの細部は覚えていないのだが、おそらく本作では謎解き部分をかなり削ぎ落している。(死体を調べるところなど、台詞だけで処理)つまりは、基本的には『オリエント急行殺人事件』のあらすじを既に知っている人を対象にしているということだろう。ミステリーというより、人間ドラマとして豊かに描きたかったんだろうな。

冒頭のエルサレムでの描写やセルゲイ・ポルーニンの格闘シーンなど、肉付けしてきたなー、というシーンも多々あり、楽しい。ただ、アガサ・クリスティの『オリエント急行殺人事件』を観たいという人にとっては、薄く味付けされた映画化に見える可能性は高いだろう。観る人によって感想は分かれるかも。

はっきりいって本作最大の見どころはキャストたちの演技なのだが、ケネス・ブラナーのポアロは良くも悪くも人格者然としている。アルバート・フィニーやデヴィッド・スーシェほど個性的ではないが、その分他のキャストを引き立てているともいえる。

最も大きな見せ場があるのはミシェル・ファイファーで、久しぶりに堂々たる女優ぶりを見せつけていたが、個人的なMVPはウィレム・デフォー。「俳優って凄いな!」と思わずにはいられない技巧に、『ガラスの仮面』ばりに唸った。地味ながら圧倒の演技力。ジョニー・デップの品性下劣な感じも良かった。

年末の気分にピッタリの豪華作品で、誰にでもおすすめできる1本だった。
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