けまろう

ビッグ・ビッグ・ワールドのけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

ビッグ・ビッグ・ワールド(2016年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

『ビッグ・ビッグ・ワールド』鑑賞。しかも監督のQ&Aつき。監督曰く、アイテムの寓意は幾千通りもあり、すべて観客次第ということなので好き勝手書く。
これは明らかに創世記を意識している、と観客の誰もが思う寓意に溢れている。執拗に出てくる蛇のシーンや何の実だかわからない赤い果実を貪る若い娘、食料としての魚やパンはキリスト教的なものも感じさせる。また、蛇以外にも蛙や蝸牛などは日本的三竦みを想起させ、亀と蛇は過去の世界の在り方を暗示しているようでもある。監督の「寓意は幾千通りもあり特定の象徴はない」という言葉はまさにこういうことを示しているのだ。
二人の若い男女が都市から森に逃れて原始的な暮らしをするという構成は非常に好きだが、なんとなく徹底されていなかった(服は着たままだし、蛇にも噛まれない)のもそうしたオープン化された作風ゆえであろう。主人公であるミミ(ザハル)とクムクム(アリ)が、兄妹でありながら血縁はない、という曖昧な関係性も鑑賞者に多様な解釈を与えている。
両親の居ない兄妹はどことなく親の愛に飢えているようでもある。森の神秘にあてられてからは、ヤギのことを父と呼んでいたのが印象的だった。監督曰く、これも寓意はないそうだが、ヤギと言えば悪魔の目。ふたりは世間に交われない悪魔の子だったと解釈するのも私の自由だろう。事実、アリは妹を救出するために平気な顔をして3人の男女を殺傷する。顔色を変えずに犯す殺人、悪魔の所業でなければ何なのか。
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