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サーミの血のNMのネタバレレビュー・内容・結末

サーミの血(2016年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

まるで一人の人生を振り返るドキュメンタリーのよう。実話がモデルなのかとすら思える。エンディングなども派手で創作的な展開はなく、淡々と進んで終わる。

綿密な取材がなされたのだろうと想像できる。新鋭の女性監督の両親はスウェーデン人とサーミ人。
主人公、その妹、現在の主人公を演じる三人も実際にサーミ人だそう。

主人公のように全てを捨ててスウェーデン人になるしかなかったサーミ人は少なくなかったようだが、そういう二択を背負わされて生まれてくるということについて考えさせられる。
遠くの国ではこんな現状があるのねという他人事で終わらせず、自分の行動を振り返るきっかけにしたい。


1930年代。
エレ・マリャは賢く意思の強そうな女の子。
山奥の小さな学校に通っている。妹も一緒。

サーミ族という少数民族で他のスウェーデン人から理不尽に奇異の目で見られ、時には暴力もある。
寄宿舎生活で子どもたちだけなので無力。民族衣装なので隠しようもない。
学校ではサーミ語を禁止され、何かあればすぐに体罰。

中心都市部であるウプサラから彼女たちを尋ねてきた人物たちは、生徒たちの体を隅々まで調べ写真を撮っていった。
なんの説明もないのでエレ・マリャは傷つき悩む。学校でも道端でも常につらく、逃げ場もない。

隠れて普通のワンピースを着ていると、通りかかった男たちにダンスパーティーに誘われた。
そこでクリスティーナと名乗り、ウプサラの青年と気があった。
束の間楽しい時間を過ごしたが、見つかって寄宿舎に連れ戻され体罰を受ける。

ウプサラの学校へ進学したいと教師に相談すると、
この学校の子は進学できない、サーミ人はスウェーデン人と脳が違うからと言い渡される。

先日の青年のもとへ脱走する。
実家を尋ねると彼は不在だったが、両親に嘘を話し家へ泊まることに成功した。
深夜帰ってきた青年はもうエレ・マリャを覚えていなかったが、とりあえずそのままベッドイン。
しかしラップ人だと察した両親はこれ以上の宿泊を許さなかった。

行き場に困りウプサラの学校へ忍び込むと、図書館にいた教師が話を通してくれてそのまま通えることに。
友達ともやっていけそう。
しかし授業料を払うあてもない。
実家に帰ってみると、もとから家族からよく思われていなかったがますます険しい顔をされた。
テントに住みトナカイを放牧し移住しながら暮らす。母と妹と祖父母。父は亡くなっている。
一旦は援助を断られたが、翌朝母は父の形見を渡してくれた。これを売ればどうにかなる。

教師となり家族を築いたクリスティーナは、数十年ぶりに妹の葬式で帰郷。しかし彼女を見る親族や街の人々の目は変わってはいなかった。
彼女は妹の遺体に心の中で静かに詫びる。
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