emily

フロッキングのemilyのレビュー・感想・評価

フロッキング(2015年製作の映画)
3.4
スウェーデンの田舎町でレイル事件が起こる。イエニファーは真実を打ち明けるも、加害者家族は町で中心的な位置を占めており、彼女は母子家庭に育っている。二人の生活環境が、善悪の基準と並行していく。

閉鎖的な村で起こったレイプ事件。たった14歳の少女はその事実を公表し、裁判にまで発展していく。幸せそうな結婚式の陽気な雰囲気の横で、酔っ払って吐いてるイエニファー。生を感じさせる肉の映像が交差し、対照的に曇った窓ガラスからしっかり浮き彫りにされない村の二面性を感じ取る事ができる。

村の陰湿な空気感を薄暗い青白い映像に溶かし込み、言葉少なく、飲み物を飲み音などの生活音を漂わせ、全体に不穏な空気感を作り込んでいる。

前半はレイプしたのか?それとも狂言なのか?のサスペンス感で埋め尽くされるが、それよりそれにより各々が取る行動と、それが交わる事で導かれる、善悪の交代、力関係の見せつけ、それでも戦う少女の強さと、大人の汚さが浮き彫りになり、今まで築き上げてきた町の結束に亀裂が入り、見事に崩壊していく。

良かれと思う行動は、自分の見栄や体裁のためのものである大人や、真実を伝えたいが言える雰囲気がなく、子供の純粋な気持ちを上塗りして、別人格に導いてしまう親の行動。加害者もある意味被害者であり、その境界線が混合していく。

真実は二人の心が知っている。その真実が大人たちや、無知ゆえ残酷な子供達に塗り替えられ、真実を口にする事すら出来ない状況を作られた時、彼女のように最後まで戦える人は多くはいないだろう。いつでも周りで支えてくれる人が居て、人は強くなれる。そうして犯した罪を認めるためにも、勇気が必要だし、支えてくれる大人が必ず必要である。そんな環境がなくとも強く自分を持って戦う主人公の姿には心打たれる。真実は守られなくてはならないし、それをバックアップできる環境を整えるのは大人の仕事である。
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