Ray

レミングスの夏のRayのレビュー・感想・評価

レミングスの夏(2016年製作の映画)
5.0
レミングスのメンバーが集まるあの美しい川の名前はなんだろう。 
取手市を中心とした茨城県内での撮影とのことなので。
中学の頃、筑波で亡くなった兄を迎えに行く時に通った川を思い出しました。

光が眩しくて。ただただ美しかったです。

隠れ家の闇と川辺の光。
その時の子供達の心情を表すかのような対象的な映像です。

レミングスのメンバー達のやり取りは子供の頃の学級会を思い出します。
議論を交わす友達がまるで演技をしているかのような、なんとも不自然な感じ。
正義感という仮面を被ってキリリと格好良く演じているみたいに。

普段はもっとだらしなくてズルイこともする。面白くて優しい友達達。

議題を前に言わされてる感じが。

そんなものだったのでは。子供の頃は。

この映画の子供達は、劇中で更に劇を演じている。
怒りと正義感に駆られていつもの自分を超えている。
誘拐は犯罪。でも。

だからこそ。

劇中の普通であるはずの子供達がレミングスを演じている。

小学生の頃の誓いが中学生になった心とせめぎ合う感じ。

不自然?冷静?それはそうなのでは。

それを見越しての演技としか思えない。

ナギの最後に犯人へナイフを向けて号泣する姿を見て思いました。

これが本当の姿。

苦しかっただろうに。  

ごめんなさい。大人が悪い。

怒りを駆り立てて自分達の信じる正義に向かう仲間達の中でミトだけが、悲しみだけで友達に殉じようとしている。

だから。一際、愛らしく愛しく見える。

自分がもしも同じような状態で死んだとしたら、友達にはこうあって欲しいと、無意識に誰もが思うからなのではないだろうか。

ただ悲しんでくれるだけで。時々思い出してくれるだけで。

戦わないで欲しい。でもありがとう。ごめんね。

ハサミさんはまさみさん。

まさみさんは兄を亡くした母みたいでした。

心は目に見えないはずなのに壊れた事は分かる不思議。

「あんたが死ねばよかったのに」

調子を崩した母の言葉をそのまま受けて家に帰れなくなって。

いつまでも河原で夕陽を眺めていました。

そっと帰るといつもの母がいて。

忘れたつもりの記憶が、この映画を観て思い出したり。

同じ夕陽でも美しい時間帯があって。

同じ景色が心次第で大きく違ったり。

太陽が沈むそのタイミングもほんの一瞬で。

この瞬間を映画に収める事が出来るのですね。

美しいなと思いました。
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