ちろる

美しさと哀しみとのちろるのレビュー・感想・評価

美しさと哀しみと(1965年製作の映画)
3.9
清純派で突き通していたと思っていた八千草薫さまのまさかラブシーン。
しかもその寝込みを襲うのはこれまた見目麗しい加賀まりこさん。
「痛いように噛んだんですもの。」
美しくてしかもちょーエロい。
お二人ともあくまでもお上品で、じわじわと静かに山村聡さん演じる煮え切らない大木先生を精神的に追い込める。
情熱をうちに封じ込める元愛人(八千草)
エキセントリックで刹那的な元愛人の弟子(加賀)
旦那の不貞を認めながら壊れゆく妻(渡辺)
登場する女性全て、狂気に満ちてはいるものの3人全ての気持ちがとても理解できる。
未だ消化しきれぬ哀しみと想いを芸術にぶつけて封じ込める音子、愛人らを憎まず絵や小説を憎む妻。
皆、罪を憎んで人を憎まず。
故に狂っても美しい。
今の時代であれば抹殺されるほどの大木先生だけが醜い。ゲス。

音子たちの住む京都の枯山水庭園と、それを望むお寺のように縁側の続く和室とその暗闇に置かれる和服の2人の美しさは国宝レベル。
ラストの悲劇はこれらの美が永遠でなくなってしまうことを示唆する。
目をつむっても美しいけい子のたっぷりとしたまつ毛が余韻を残していた。
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