なべ

空海 ーKU-KAIー 美しき王妃の謎のなべのレビュー・感想・評価

2.8
 1週間帰阪して、父を高野山に弔ってきた。
妹に「お布施がクソ高いのになんでうちは真言宗なん?」と聞かれ、「そりゃお父さんはええカッコしいやから」と答えたら、「なんでええカッコしいは真言宗?」と返ってきた。
 大して知識はないが、日本史の授業の仏教伝来と遣唐使くらいは覚えてる。さらに最澄と空海が仏教界のサリエリとモーツァルトだってことも知っていたので、2人の格の違いと密教についてサラッと教えてやった。ついでに真言宗が仏教界きってのハイブランドであることも。それがきっかけで、この因縁の2人を描いた映画ってあったっけ?と気になりこの作品に行き当たった。

 …なにこれ? 「名探偵空海〜幻術に彩られた楊貴妃の死の謎と黒猫の呪い」やんかいさー!てか、日本の俳優が数名出てる中国映画なのな。原題は「妖猫傳」か。
 なんと染谷将太(空海)や阿部寛(阿倍仲麻呂)が中国語を喋ってるじゃないか。染谷の吹替は声が激似でまったく違和感なし。リップシンクもバッチリだったので中国語をかなり練習したのだろう。残念ながら阿部ちゃんの声は全然違ってたけど。
 空海と詩人の白楽天が楊貴妃の死の謎に迫るって話で、原作は夢枕獏。あ、原作は国産なのね。それ以外はメイドインチャイナな歴史ファンタジーなので、展開や演出に多少の文化の違いというか生理的違和感は感じられたが(例えば歩くスピードがめっちゃ速いとか、各エピソードの雑な繋げ方とか)、それなりに楽しめた…嘘、最初は途中で観るのを断念した。いやあずっこけちゃってさ。だって自分の求めてたものとあまりにもかけ離れてたもんだから。でも染谷将太の閃きを得たときのニヤリと笑う様は何気によかったので、後日改めて、荒唐無稽なエンタメだと割り切って最後まで観た。
 おもしろいかおもしろくないかでいうとおもしろくはなかったが、見ているのが苦痛というほどではなかった。ときどきゾクッとするようないいカットがあったしね。でも、全体的に駆け足で物語を進めてるようなせわしなさが付き纏っていて、終始落ち着かなかったのが残念。
 もっと史実に沿ったものが観たくて、いまは北大路欣也の空海に手を出そうかどうか思案中。全青連と東映が提携した問題作らしいので大いに興味はある。出演陣がなかなかよろしくて。

 ん?高野山のお土産? もちろん角濱の生胡麻豆腐よ。
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