ベルサイユ製麺

裏切りの街のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

裏切りの街(2016年製作の映画)
3.5
ダブルじゃなくてクワトロだった!げ、げんなり…。これを劇場で、大切な人と観るという体験を想像しただけで身体中の細胞が大量死しましたよ…。
三浦大輔監督作は『ボーイズ・オン・ザ・ラン』しか観てません。なんとなく偽悪的というか、人間の見せなくて良い部分にわざわざスポットを当てているような印象が苦手で、ずっと観てなかったのです。
今作も他の方のレビューから、その生々しさ、というか生臭さは充分に伝わる、普段ならジャンプ案件なのですが、キャスティングがとても魅力的に思えてつい借りてしまいました。

彼女の部屋に転がり込んだヒモ青年と、平凡で押しの弱い主婦が出会い系サイトをキッカケに深い関係になって行きます。堕ちていく2人のそれぞれの生活は時折綻びを見せますが、その都度卑怯な立ち回りで乗り切り、ズルズルと関係は続いていきます…。
殆ど最後までこの感じが続きます。派手な展開とか無いよー。ああ嫌だ。
それにしてもキャスティングはやはり完璧!ヒモの池松壮亮、ズルズルいっちゃう寺島しのぶ、なんたる座りの良さでしょう。特に池松さんは、前世も前々世もヒモだったのではないかと思わせる佇まい。演技も、脚本、演出も全てがスーパーリアルで、身に覚えが無いようなことでも「イテテ…」となってしまいます。もう、ずっと腕組みして観ちゃいましたな…。
個人的に特に感心したのは衣装のリアリティです。首回りの伸びきった東京ブランドのTシャツ(コレを一張羅にする感じ!)。防虫剤が香ってきそうな40代主婦の勝負服。彼女のヤベー私服。「私服ヤベー」っていってる奴のもっとヤベー私服。あまりに残酷、鬼畜のスタイリング…。最高です!
誰の身にも起こりそうな出来事を、取り立てて派手な脚色もせずに2時間以上見せてしまう。三浦大輔監督のただならぬ手腕を伺わせます。作品の出来栄えには全く文句はありません・嘘です。気になった点をちょっと挙げます。
⚫︎ギター主体の劇伴の馴染みがあまり良く無い。邦画で良くありますね。
⚫︎銀杏BOYZの主題歌、自体は良いのですが、この物語の主題歌としては若向け過ぎて、寺島しのぶ視点で見ていた世代の人が疎外感を感じてしまいそう。はっぴいえんどとかみたいな、時代を超越したものの方が相応しかったのではないかなー。
⚫︎終盤の爛れきった関係の入り込み具合はやり過ぎで、身近な話題に感じられるません。急に醒めてしまいました…。
⚫︎エンド曲の後のエピローグが、構成も含めて取って付けたみたいで、そもそも不要だと感じました。
…などなど、要は万人に共感を呼ぶ物語にギリギリなり損ねているように感じました。逆に、この話に完全一致の体験談がある方は身体中の細胞が全部死んだでしょうね…。
タイトル『裏切りの街』とは、荻窪は待ち合わせにちょうど良いのにラブホは無いなんて裏切られたわー、の街ということでしょうか?