半兵衛

無頼無法の徒 さぶの半兵衛のレビュー・感想・評価

無頼無法の徒 さぶ(1964年製作の映画)
4.3
映画あさりは膨大なジャンク品の中からレアな貴重品を見つけるようなものと誰かが言っていたとか言っていないとか。でも大したことのない昔の作品を色々見て、そこから時折この作品のような輝きに満ちた隠れた傑作を発見したときちょっとした満足感を覚えるのも事実。

戦後の日活映画で職人監督として活躍してきた野村孝監督が、山本周五郎の原作と山田信夫の脚本を得て丁寧に作り上げた作品。アクションスターとしての演技を捨てて等身大の人間像を演じる小林旭をはじめ、単純明快なキャラクターではないそれぞれに背負ったものがある人物を演じる役者たちも魅力的だし、高村倉太郎のカメラや狭いセットのなかに時代の空気を匂わせる黒澤明との仕事で知られる松山崇の美術などスタッフの仕事も光る。こうしたスタッフや役者がいつものプログラムピクチャースタイルを捨てて、突然変異を起こしてしまうのも撮影所システムがあればこその魅力とも言えるかも。

冒頭雪が降るなか幼い頃の主人公さぶと栄次が会話しそこにヒロインが現れる儚い美しさに満ちた場面が素晴らしいし、その構図が結末に繋がっていく演出も凄い。そして対立や葛藤を経て真に結ばれた男の友情が光るラストにグッと来る。

いつもの小悪党スタイルとは違う、陰のある罪人を演じる小松方正の演技も印象に残る。
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