「バットマン」シリーズそもそもの強みであったクライム◦サスペンス的要素を全面的に押し出した本作は、結果的に同ジャンルにおける『セブン』級の最高傑作へと昇りつめた。世界観も現代風のデジタル社会と白色LED光が存在しないレトロ感を絶妙にブレンドし、サスペンスフルな雰囲気を高めた。また、スプラッターモノほどのグロさは無いのに、暴力に「痛み」を感じさせる映像表現はまさに演出の「極み」と言える。トランスメディア的文脈を排し、純粋に「バットマン」の世界観を極めたことで通常のクライム◦サスペンスモノでは描き切れない世界の理不尽さを語り切った点も評価。そのような意味で、ここ十年程の「アメコミヒーローモノ」ブームに違和感しかない洋画ファンにこそ見てもらい作品。『ジョーカー』から動き出した社会批判系のストーリーテリングが「DCコミックスxワーナー」の中で更に開花していく。
