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THE BATMAN-ザ・バットマンーの盆栽のレビュー・感想・評価

4.5
暗すぎる…黒すぎる…


 新生バットマンここに誕生。マット・リーヴス監督とロバート・パティンソン主演による本作は期待と不安に満ち溢れた作品。世間的にもDC作品は『ダークナイト』三部作は絶賛され、その後のDCEUは賛否両論。そんな不安定な中で製作された『ザ・バットマン』。バットマンファンとしては「傑作とまではいかなくても、どうか良い作品ではあってくれ!」と公開までずっと願っていました。
 いざ蓋を開けてみると、見事な『ジョーカー』のアンサー映画であり、「フィルム・ノワール」の復活劇。そして「ネオ・ノワール」の一作として強い衝撃に覆いかぶされた『ダークナイト』以来の最高なバットマン映画でした。

 探偵であるバットマンことブルースが、リドラーのなぞなぞを解き明かす度に浮き彫りになる「都市(ゴッサム)の闇」。そしてこのゴッサムに隠された陰謀にバットマンら善人が巻き込まれる。
「陰謀」「闇」「巻き込まれる」
 これらの単語に共通されるのが「ノワール作品」。本作のリドラーのモデルでもある実際に起きた「ゾディアック事件」を元に映画化した『ゾディアック』を中心に、『チャイナタウン』『コールガール』などの名作映画が本作に強い影響を与えているのは観れば一目瞭然。ようやくこのゴッサム・シティで70年代の犯罪映画を再現してくれました。

 そして本作は今までで1番の細工バットマン映画。恐ろしいバットマンと、病んでいるブルース・ウェイン。インスパイア元であるDCコミック『バットマン:エゴ』でもブルースはまさに自分自身の「エゴ」と対峙。本作でもブルースは悩み、苦しむ。ですがリドラーやペンギン達との対峙に時間を費やしたせいか、ブルース自身の自己の再生が不十分なまま解決しています。3時間の超大作でさえ描けないブルース・ウェイン本人。リドルを解くより難しいぞ、これは。

 鑑賞中の約3時間、釘付けになったのは間違いありません。徹底的に暗くリアルに描いた作風、個人的には過去作で最もカッコいいパティンソン演じるバットマン。『ダークナイト』三部作は超現実的な超傑作ではあったものの、アクションが印象に残りませんでしたが本作はゲームの「アーカム」シリーズを彷彿とさせるコンバット。カーアクションも圧倒的没入感。サスペンス要素も多少なりとも無理があるだろ、と思う箇所もありましたが、人間の真髄を酷く描けています。本作のリドラーは今まで僕達が知っていた『バットマン』の「リドラー」ではなく、全く知らない最悪な『ザ・バットマン』の「リドラー」です。ポール・ダノ、恐るべし。

 DCコミックスの原点、即ち「Detective Comics(探偵漫画)」の映画化としても素晴らしく、「こんなバットマン映画が観たかったで賞」最優秀賞作品です。
 今回ばかりはアクション大作ではなく、ノワール大作。闇に染まったゴッサムを映画館で体験出来ることが何よりも貴重。
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