ナミモト

THE BATMAN-ザ・バットマンーのナミモトのレビュー・感想・評価

4.0
正義なのか、悪なのか。
復讐が、またべつの復讐(報復)へと連鎖する。何の為の復讐なのか。
ポスターの、バットマンを中心に置いて、遠目で見ると<?>がみえてくるレイアウトよくないですか?

宣伝では『ジョーカー』と対比して謳ってますが、ジョーカーはジョーカーで、本作は本作かな、という感じです。そして、どちらも大好きです。あとでも触れますが、ジョーカーがいるからバットマンが成り立って、バットマンがいるからジョーカーが成り立つので。
あとは、ノーラン版バットマンとの比較も面白いかなと感じます。バットマンは対峙する悪役によって、バットマン自身が内包する悪の要素が角度を変えて見えてくるのが面白い。最後はバットマンが一応勝ったみたいにはなるのですけどね。

本作の新しい視点と感じたのは、ネットを中心とした陰謀論支持者達の取り入れ方でしょうか。記憶に新しいのは2021年1月のワシントンでのトランプ支持者達による暴動事件。本作のリドラーはなぞなぞが大好きな知能犯ということになっていますが、陰謀論を流布し(彼の動画フォロワー数が500人というのも結構リアルな数値だな、と。)、複数人の人々を実行に駆り立てるだけのカリスマ性を持つ悪役ですね。リドラー本人にたどり着いても、彼の蒔いた仕掛けに翻弄されるバットマン、良かったです。
また、コスプレ野郎とかフリークと嘲笑されながらも、お金持ちだからギミックでいろいろと盛れてしまうバットマンの、超人にはならない人間くささ。パラシュート失敗するとか、敵の暗号のスペイン語読み違ってちょっと見当ずれちゃってた箇所ですとか、(それなのに凄いカーチェイス笑とか、ペンギン歩きとか、笑)、バットマンスーツを脱いだ後の背中の傷(←これ、ダークナイト・オマージュみたいだなぁと思いました)ですとか、彼は手袋しているから大丈夫ですとか、あ、またキャットウーマンの唇を期待しちゃったでしょ!?…口動いちゃってるよ!?みたいな、ちょこちょこ覗く、バットマンの人間くささ。凄く良いです。バットマンの硬派な性格が、何かユーモラスにもみえてくるんですよね。
素顔は、青白い顔の、翳りを帯びた青年ブルース・ウェインも。良かったです。
何度か繰り返したアイスバーグ・ラウンジの入り口通過方法、あのパターン変えてくるところ、笑えました。
そして、愛すべき悪役たちから執着されているとしか思えないぐらい、時に悪役からその存在が強く求められるバットマン。このあたりは、ダークナイトもそうだったなぁ、と。バットマンもリドラーも相手がいなければ自分はいないし、その行動を正当化する為の理由として相手を必要としあっている。この、ちょっと共依存みたいな関係性。そして、本当の悪とは権力側にもその要素が侵入しており、正と悪とは不可分な関係であるとする視点。
一方で、親を亡くした孤児達が大人になり、どこか大人になりきれていない、大人になるまでの間に心に傷を多く負いすぎた人達(ブルース・ウェインもセリーナ・カイルもリドラーも、それぞれが孤児ですよね)の物語でもあって、そこもまた魅力です。
ナミモト

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