摩天楼の影に溶け込むスーツや滴る雨を疾駆するモービルなど署名のような要素はそのまま、既存作に比べ若く不安定な彼が本当の意味でダークナイトとなる成長譚として新たな魅力に溢れています。
特に、伝播し増殖する悪意の正体がそれを掃討しようとする自分そのものだったと気付く展開はダークヒーローのオリジンとして絶望的であると同時に真当で正しく美しい今作最大の白眉と言えます。
ただ、愉快犯が恣意的に提示するクイズを淡々と解くストーリーラインに高揚感はなく、派手な演出の割に観客の予想を超える頭脳戦にもならず、要所要所も簡素に処理されるため全体的にはやや薄味な印象です。