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THE BATMAN-ザ・バットマンーのsomaddesignのレビュー・感想・評価

5.0
新米バットマン奮闘記。続きはあるのか!?

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バットマンが初めて犯罪に立ち向かってから2年。ゴッサムシティでは、不可解な連続殺人事件が発生する。それぞれの現場には、バットマンに向けた謎のメッセージが残っていた。事件の解決に動き出したブルース・ウェインは、自身の家族も深く関わるゴッサムシティの腐敗に直面することになる。

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なげえ!
覚悟して見に行ったけど、予想以上に長え!
体感4時間くらいに感じた。
イチイチの動作やセリフの間が長くて、もっとキュッキュと動け!と。
初めて映画館で「倍速再生」ボタン探してしまったよ。

あと、暗い!
話が暗いのはモチロン、単純に画面がずっと暗い。
昼のシーンがほとんどなくて、夜のシーンだとバットマンと暗闇の境界がわからないくらい暗い。ダークナイト三部作以降、作を重ねるごとに暗くなっていく「バットマン」シリーズ。そのうちずっと真っ黒いスクリーンだけを見る映画になる予感。(IMAXで観ると、黒がパキッと立って見にくくないとの説も)


「セブン」のオープニングを思わせる、暗く狂気じみたビッシリ書き込まれたノート、褪色したカラーリング……。書いてるのがリドラーかバットマンか判別しづらい、同族の狂人として描いてみせてる。彼ら二人の行動の共通性を通じて、彼らの違いを炙り出す作り。

過去作との違いは、原作コミックやアニメシリーズにあった、バットマンが難事件を調査・推理する「夜警探偵」の側面にフォーカスした感じ。クライムサスペンスよりミステリーに大きく舵切りしてる。
だがしかーし! 今作のバットマン、過去イチ脳筋。謎解きもほぼアルフレッドが解いてるし。何故か床に巨大クレイジーウォール(写真やメモを壁にペタペタ貼って、ピンと紐で相関図を作るアレ)を作ったり、自信満々に誤答に突っ走っちゃう。「翼のあるネズミってな〜んだ」て聞かれたら、普通正解わかるっしょ。「そうか、ペンギンだ!」じゃないのよ。おかげでペンギンとのカーチェイスや尋問シーン、無駄足なの分かってて見る観客の気持ちよ。

金持ち引きこもりのボンボンが、夜な夜な小悪党をぶん殴るに出かけてる……ってなかなかサイコパスな状況。俯瞰すると誰がヴィランで、どっちがダークヒーローか分からなくなっちゃう。

街を良くするために悪を一掃しようとする割に、政治家や司法の腐敗は知らんぷり。チンピラやコソ泥をぶん殴るのも私怨混じりで、被害者がドン引くレベルで痛めつける。新米バットマンがヒーローとしての在り方を問われるストーリーで、社会の悪を憎む孤児の復讐って意味でリドラーと裏表の関係になる。二人とも同じような盗撮してるし。(ジーン・ハックマンの神経衰弱な探偵「カンバセーション…盗聴…」オマージュ)
「ヒーローの本質とは人助け」って着地が良い。悪党を殴って回るより、まずは困ってる人を助ける。一人一人が助け合うことでしか、真に社会を良くできないって気づきでもある。悪を倒すのに腕力で解決するんじゃなくて、倫理的にも勝利するのが良かった。


劇場型犯罪は「ゾディアック事件」をモチーフに、2003年の「ピザ配達人爆死事件」といった実際の事件を下敷きにしてると思われる。のちの検証映画や、当時のニュースを覚えてる世代は背筋が凍る。

リアルよりの設定のせいか、秘密道具があんまり出てこない。おもしろガジェットを期待してると拍子抜けるけど、まだちゃんと車の形してる新バットモービルは超カッコよかった!


「TENET」のニール役が記憶に新しいロバート・パティソンの新ブルース・ウェイン。メインテーマ「Something in the way」を歌うニルバーナのカート・コバーンをモデルにしたという孤独を内に秘めた青年を好演。絶望の果てに希望を見出そうとするようなもがき、暗い情熱に突き動かされてる佇まいが印象的。ニールの陽性キャラからは真逆の役柄にも、しっかりフィットしちゃう振り幅の広さを見せつけられた。


特殊メイクでペンギンを演じてるコリン・ファレルの嬉々とした佇まいよ。エンドロール見るまで、コリン・ファレルって気づかなかったよ。どことなくデニーロのモノマネしてて、どことなく「グッドフェローズ」のデニーロっぽい。
ドラマ「ゴッサム」のオズワルドから地続きの狡猾な小悪党。忠実な下僕のふりをしながら、虎視眈々と寝首を掻く機会を窺っている。誰も信用しないし、誰も彼を信用しない。潮目を読むに長けて、フラフラと不安定な佇まいが最高すぎる。続編があるなら、(ドラマ「ゴッサム」と同じく)今後ペンギンが物語の中心になってしまいそう。


リドラーの正体があの俳優って素晴らしすぎる。INCELっぽいキャラクターでありながら、「セブン」のケビン・スペイシーのような歪んだ正義感が狂気漂う。不幸な出自に孤独を募らせて、ネット越しでしか他人と繋がれず、仮想空間の中で自我が肥大しちゃった厨二病青年。似た役を演じることが多いけど、ホントこの手の役を演じたら世界一かも。名誉もやしっ子。
ビン底メガネも超かわいいし、野望が失敗に終わってメソメソしてる姿に愛おしくなっちゃった。
映画全体には文句はあれど、ポール・ダノが最高なので今作は傑作でいい。


余談)
本編では全カットになってしまった、バリー・コーガンがバットマンと対峙するシーン。これまで数々の名優が演じてきた名物キャラクターのバリー版。カットされたのが勿体無いくらいゾクゾクする造形で、続編が待ち遠しい。



20本目
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