悪魔の毒々クチビル

THE BATMAN-ザ・バットマンーの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

3.1
NO MORE LIES

若きバットマンと腐敗したゴッサムシティを描いたお話。

何代目か数えるのも面倒くさい新たなバットマン映画。
ロバート・パティンソンのキャスティングが発表された時は署名活動しちゃうレベルの批判がありましたが、こうして作品も好意的に受け入れられ続編も決定した今となってはそれも嘘みたいですね。そもそも100歩譲って演じる俳優の犯罪歴とかポリコレ関連でそう言う行動を起こすのはギリ理解出来るけど、「あいつは向いていない」ってファンの勝手な理想を押し付けて署名活動しちゃうのは中々イカれている気がするのですがね。

3時間くらいある長丁場をどう描くか不安だったので、若干敬遠気味ではありましたが年末暇だしってことでね、観てみました。

うん、長い。
長いし、それに見合った内容でもない。

「バットマン」って、ティム・バートンやクリストファー・ノーランらが各々異なった作風で幅広く描かれていますが、今回はノワールと言うかサスペンス要素が強い。
それに合わせてトーンや色遣い、ゴッサムの腐敗っぷりなんかも作品にダークな装飾を施しています。そこら辺は別に良かったんです。
ただ物語自体に3時間も釘付けにさせてくれるような魅力が無かったです。
何となく冷めて来たのはキャットウーマンとの最初の潜入捜査のグダグダ辺りかなと思うんだけど、これまで大して苦戦せずに謎解きしてきて「よし、ペンギンが怪しいぞ!」とバットモービルまで使ってド派手に追い詰めた挙げ句、全然違っていた事が判明してペンギンにも「スペイン語の発音の違いも分からねぇのか」と馬鹿にされて拘束したペンギンを放置して次へ進む一連の流れがすんごいアホらしくて残念でした。
別件で逮捕するわけでもなく、ただ間違って縛り上げられちゃって放置されたペンギンさん…
一見シリアス貫いているようで、ちょいちょい間抜けな一面が垣間見えちゃうの一番ダメよね。
終盤の爆破もアメコミ的な見せ場を作るならアリかもしれませんが、探偵ポジションとしては大失態な訳で。

あとキャットウーマンは無理に出す必要も無かったような。
唐突なキスシーンには面食らったし、マスクが昭和の泥棒みたいなクソダサいやつで流石に後半ちゃんとしたモノ出るだろと思いきやそんなこともなかったです。
そもそも素顔のシーンの方が断トツで多かったけども。
薄っぺらいラブロマンスもこれまた浮いていましたね。

リドラーはジム・キャリー版もあんまり覚えていませんが、今回のはマスク込みの見た目が良くも悪くも平均的な異常者って感じ。
ポール・ダノの粘着質なキモさが際立った逮捕後の方が印象的でした。

最終的に多数のゴッサム市民を巻き込む大事になるけど、肝心の市民に存在感が無かったのも痛い。
何と言うかね、物語がバットマンだけでなく市民にも希望を持てる道を探さねばエンドの割にはゴッサムの人々の殆どがいるだけのモブみたいな役割しか担っていなかったように見えたんですよね。

まぁロバート・パティンソンはブルース・ウェインの時もバットマンの時も普通に良かったですよ。
あんだけ撃たれながら戦うなら、もう少し頭部の防具に気を遣った方が良いとはずっと思っていたけど。
あとアンディ・サーキスのアルフレッドが意外と好きでした。そしてめっちゃ有能。

シリアスなトーンで長々やれば全部「ダークナイト」みたいな存在になれるって訳ではないよなぁと、改めて思いました。
続編決定しているし、スタジオ側もバットマンはこのシリーズに力を入れて欲しいみたいだけど、DCEUには巻き込まない方が良いと思います。
それにしても久々に復帰したのに、出番がある映画がお蔵入りだの自分の所だけカットだの最終的には単独映画も中止になったマイケル・キートンが可哀想過ぎやしませんか。
こんなに俳優振り回して利益優先するくらいならDC映画は作っても、ユニバース関連の作品は5~6年くらい作らなくていいんじゃね?とか思ったり。