けまろう

普通の家族のけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

普通の家族(2016年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

『普通の家族』鑑賞。フィルメックスコンペティション作品。演技、カメラワーク、構成、主題、いずれも非常にレベルが高かった。"ordinary"ということに拘った撮り方がこの作品の竜骨だろう。ストリートチルドレンのまま夫婦となったアリエスとジェーン、そして生まれたばかりの息子アルジャン。路上でセックスをし、路上で子供を育て、日雇いの仕事でなんとか生計を立てている。その極貧生活の中でも家族としては"ordinary"であり、親子の愛情は貴賎に関わらないというのが本作の根底にあるテーマだ。
ジェーン夫妻は貧しいが故に、客観的に酷い扱い(警察に胸を見られたり、マスメディアに息子の写真をなくされたりなど)を受けるが、ジェーンの子を思う想いは一般的な母親のものとなんら遜色はない。最後、アリエスが連れ戻ってきた子供が自身のものではないと一瞬で見抜き、元の母親に返しに行くシーンからも、ジェーンの"ordinary"な母性が伺える。
加えて、その"ordinary"な性質を担保しているのが、何度も挿入される監視カメラの映像だ。監視カメラは映っている対象を全て平面的に(フラットに)捉える。それは即ち、「路上で暮らす若夫婦」も「海外旅行にきた外国人」も「中流家庭に収まる主婦」も、すべてを同じ次元として捉えるということにほかならない。そこに、普遍的な(="ordinary"な)家族愛や夫婦愛を読み解くことができるだろう。また、その機能は、最後のシーンにもなるバスという公共交通機関にも備わっているのだ。
アリエスもジェーンも、私たちと同じように「普通」に公共交通機関を利用し、監視カメラにも映る。そして、「普通」に子を思い、伴侶を愛している。
けまろう

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