ボーイフレンドができないことを周囲から揶揄されたり心配されたりしていたユンジュが、ジスと知り合ったのをきっかけに女同士の恋愛にあれよあれよという間にのめり込んでいく前半、多幸感にみちあふれている。ジスにしなだれかかって甘えるユンジュがかわいい。
それでも幸せなことばかりではなくて、後半はだんだん苦く、くるしくなっていき、ジスはやもめになったばかりの父親と同居することになり、ユンジュは美術展の制作が思うようにはかどらない。ジスの父も、友人たちも、女は男と結婚するのが当り前と思い込んでいて、彼らを前に嘘をつき続けるのも苦しい。それでも好きという気持ちは止められなくて、長距離を超えて互いのもとに会いに行く。
何も解決しないまま、見通しもつかないまま、映画は終るのだけれど、最後のジスのセリフ、「会いたかった」、それだけが二人の間の真実だった。
ジス役の俳優は『マイ・ディア・ミスター』で口の軽い意地悪な女子社員の役をやった人で、どうしてもそのイメージが抜けなかったが、好きな人と父親の板挟みになる役柄を好演していた。ユンジュ役の人は初めてだったけれど、良い意味での素人っぽさが素敵。
この映画の監督をした人が、その後セクハラで訴えられて有罪になり、そのために映画製作から引退したという記事をネットで読んだ。ほんとうだとしたら残念なこと。こんなにいい映画を作る人なのに。
