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サファリの小のレビュー・感想・評価

サファリ(2016年製作の映画)
4.0
アフリカで野生動物を狩猟する『トロフィー・ハンティング』に密着したドキュメンタリー。

公式ウェブやフライヤーには<人間の倫理の境界線 炙り出される狂った人間の倫理観>とか<世界を震撼させた“トロフィー・ハンティング”の実態 人はなぜ不必要に動物を“殺す”のか?>といった惹句が踊る。

しかし、人間とは本能が壊れ、自然法則的に合理的でなく狂っているから、不必要に動物を殺すのであり、だからこそ共有できる倫理観が必要なのである。そうした人間の本質を示した映画。

人は2つの立場を取り得る。ひとつは、人間はそもそも罪深いのだから趣味のハンティングのどこが悪いのか、ということだろう。動物はダメで、魚や昆虫ならいいのか。生き物によって、趣味で殺すことの良し悪しを決めているのは人間であり、それって傲慢なことなのじゃないのか、と。

もうひとつは、いやいや人間は一人では生きていけないのはもちろん、少数の集団でも長期的には存続が難しいだろうから、より多くの人が同意する倫理観に従って生きるべきでなのだ、と。

倫理とか道徳とかって、時に堅苦しく、説教くさい。逸脱した方がいきいきと生きることができるように思えることの方が多いような気がする。

しかし、前者の立場を突き詰めれば、自分の気持ちや趣味のためなら人間が人間を狩猟することだって肯定することになってしまう(映画『パージ』シリーズにはそういう前提があると思う)。

だからこそ人間は人間という種を守るため、これ以上超えたらヤバいよねという共通認識を構築し、そこからはみ出す者を警戒するようになっているのだろう。

そういう共通認識を言語化したものが法律とか倫理とか道徳とかで、それらは人種や民族によって違いがあり、時に現実とのズレが生じているものもあるけれど、根本的には人間という種を存続させるための知恵が詰まっているのだと思う。

サバンナの大型野生動物を撃ち殺し、得意げな自分と一緒に写真に収め、その興奮を語るハンターたちは、いずれ人間をも狩猟するかもしれないと多くの人を警戒させるのだと思う。この映画に感じる怖さや嫌悪感はそういうことだろう。

また一方で、白人が狩猟してきた野生動物をアフリカの黒人がさばき、その肉にかぶりつく姿が映し出される。そこには白人を頂点にしたピラミッドが見えてくるかのようだ。

淡々と撮っているかのようにして人間とはこういうものなのだという本質をあぶりだした、なかなかやるなあ、と感じた映画だったかな。

●物語(50%×4.0):2.00
・人間の怖さがよく描かれているのではないかと。

●演技、演出(30%×4.5):1.35
・うまさを感じる編集。グロイ映像は人によって要注意。

●画、音、音楽(20%×3.0):0.60
・普通によろしいかと。
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