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なっちゃんはまだ新宿のtetsuのレビュー・感想・評価

なっちゃんはまだ新宿(2016年製作の映画)
3.9
監督の過去短編に合わせて鑑賞。

同級生・岡田に恋をする女子高生・秋乃。
彼の恋人・なっちゃんに憧れるあまり、いつの間にやら彼女を、空想上の友達にしてしまった秋乃だったが……。

これは、青春映画の皮を被ったアイドル哲学映画ですね……。

自分にもあってほしかった青春の日々が、嫉妬するほど、まざまざと写し出される序盤の展開から一転、その先に続く、幸福で残酷な現実が描かれる後半。

『ジョジョ・ラビット』みたく、イマジナリー・フレンドと少女の交流を描く物語なのかと思いきや、それは、あくまで発端にすぎず、次第に「アイドル(=憧れの象徴)」に対する主人公の期待や願望が、苦悩へと変わっていく展開が意外で興味深かったです。
(そのため、「推し」とか「強い憧れ」を持った人にとっては、かなり心に刺さる内容だろうなぁ~とは思った。)

また、今観ると、ミニシアター界隈のファンにとって、かなり豪華なキャスト・製作陣も見所。
『暁闇』主演の中尾有伽さんや、『宮田バスターズ(株)』の渡辺直也さん、そして、不意討ち過ぎて、さすがに笑ってしまうひと:みちゃん。
何気に、作品の特報スチールを『聖なるもの』の岩切一空監督が担当していたり、監督の初期作でも助監督・編集などをしていた『赤色彗星倶楽部』の武井佑吏さんが広報として携わっていたりと、ミニシアター作品が好きな人は、改めて観ても楽しい作品かもしれません。

ムーラボ作品として観ると、若干、後半のライブシーンにおける音ズレやカット切り替えの演出に違和感を抱くものの、単なる青春映画では終わらない、独特の作風が個性的で惹き付けられる一作でした。

2020/9/26
#シリーズ:イマジナリーフレンド映画 を追加しました。
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