takeratta

blank13のtakerattaのネタバレレビュー・内容・結末

blank13(2017年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

2018年作品
ひかりTV配信用オリジナル映像企画作品。
斎藤工監督クレジットでの、初長編作品。


敬愛するリリーフランキー師、ご出演作品として鑑賞。
アマゾンプライムにて。

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017 観客賞
ゆうばりファンタランド大賞

第20回上海国際映画祭アジア新人賞部門
最優秀監督賞(齊藤工)

第15回ウラジオストク国際映画祭長編コンペティション部門
最優秀男優賞(高橋一生・斎藤工・リリー・フランキー)

第3回シドニー・インディ映画祭
最優秀脚本賞(西条みつとし)

トロント日本映画祭2018

AUDIENCE CHOICE KOBAYASHI AWARD

第38回ハワイ国際映画祭
Halekulani Maverick Award(齊藤工)

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人が、亡くなる者と、お弔いを儀式としてお祀りする事で、生と死を分つ葬儀の中で、忌わの際で、その人の生きて来た証が、図らずも明かされていく、家族から疎まれた父の葬儀。

人の人生は命は等しく平等と言えども、魂に値段は無いと言えども、葬祭予算をどの程度にするか?や、生前に掛けておく受取保険金の総額をどうするか?は、

生きているうちから、ある程度決めをしておくものはあるにはあって。

一般的なご家庭に生まれ育った人からすると、
どうにもカテゴライズ出来ない、比較的経済的に下層の方々が参列してくる、葬儀の中で

お坊さまの計らいで、亡き人を想う言葉を頂いたてゆく。

その中で、身内の息子らや妻も知らない、お人好しの父の、実はバカでお人好しで、人のこと相談に乗っては心配しちまって、
カネで解決出来ることは、代わりに助けてた事実を知ってしまう。

放蕩人生を歩んで借金取りに追われ、居留守使う一家で育ち、父が家庭を捨て、出て行き、
ブランクが13年。

余命3ヶ月の胃がんと分かり、ひょっこり入院先を連絡が来る。

疫病神のような、面倒臭い、面倒も見たくない父にも命には限りがあり、伝えきれない過去と、
捨てた家族との心の溝を

遠い家族より、近くの困ってる他人を助けて生きて来てたことを
喪主の長男が一番ショックを受け、喪主の返礼を出来ずに想いが詰まって、遺影を次男に預け、葬儀会場から逃げてしまう。

奇しくも、あんな父親みたいになりたくなくて、
大手広告代理店の、社員になった立派な長男も
変わらず、ダメな奴だったわけで。

この現実が他人から評価されて決まる世の中と、
自己の中の観念や感情だけで、相手がどういう何者なのか?!を決めつけがちな、

偏見めいた目線のギャップを
実に上手く描いた作品は、ほかに類を見ない。

気持ち悪い、通しどころのない、何とも言えない吐き溜めのような、場末感の中にも
鶴が居たような、そんな救いが、父にはあったんだと。

貧しく育ち、次男は警備会社で金融機関への現金輸送車のドライバーになり

数億の現金を指定金融機関にお届けする、その銀行の女子社員の彼女との間に、
妊娠3ヶ月の、若い命を授かった事を

生前父を二人で見舞いに行った、病室を出て帰る途中に、
彼女から、妊娠3ヶ月なの。と明かされる。

血族は、続くのである。
借金だらけなら、相続放棄は可能だろう。
遺産は何も無いかもしれない中で
奥歯の6本のひとつはプラチナ入れて治療してるから、子供達に渡してやってくれ!と
父が、麻雀や競馬仲間や、パチンコ店員の同僚に手紙を書き残していたりして。

プラチナが本当なら白金なので、1200度の業火にて荼毘に臥されても、冷えたら残るのに
炭素のように燃えちゃうのか?それなら今ペンチで抜こうとする、知識の浅めな参列者も居て
それはそれで驚く。

私見だが、家族が居ない施設育ちだと、そもそも親の死に目がない。会えないとか、臨終の時に立ち会えないなんて、そもそも無い。
だって私を産んで捨て子にしたわけで。

居ない者を恨み用もなくて。

映画は滑稽にも受け取れそうな、
同姓の松田さんが、お隣の寺で豪華なお葬式を同日同時にされており、

参列者も多い中、
葬儀で泣くエキストラを雇っていたのを
逃げ出した、喪主の長男が、どうにも心のやりどころのなさで、
葬儀会場の脇でしゃがんでタバコをふかしてるのも、あの父の子なのである。

憎めないほど、人って当たり前だが人間臭い。
そこが良いから、逢う人と出会い、
世帯をもち、子が産まれ、家庭人になりつつ、
職業人として、良くも悪くも身近な親を

教師に、時に反面教師にして、
あんなにはなりたくないとか
あれは、先代には敵わないとか、
それぞれがありながら

お骨になる火葬場に運ばれて出棺となる。

皮肉にもこの世に天国なんていう、存在があるのかは知らないが
葬儀に、喪服の着物まで着たのに参列しない妻が
苦労して子育てした母親だが

あの出て行ったアパートの窓辺で、
夫の吸っていたハイライトを一本タバコに火を付け、煙をむせながら、吐き出す。

慌ててまたフィルター部分を加えて、少し吸い溜めては、また煙を窓の外に吐く。

まるで、死んでいった夫の思い出とキスしてるようにも見える印象的なシーン。

個人的には、こういう心象風景を映像で感じさせられるのは、すごい事だなと、かなり驚いた。

全般的に暗い葬儀の話なんだけれども
何度もチグハグな人々の、繰り出す小さな、
キャッチボールの葬儀の言葉が


結果的に、家に居なかった、好き勝手してた、
13年間を、あっという間に、
埋めてゆき、その生き様を、まざまざと
まだ産まれては来ていない、
孫の世代まで、

他人が評価してくれる。
葬儀とは、どうあるべきか?とか
お坊さまや、お寺さまへの
戒名や、法要のお気持ちのお包み額が幾らにしようとか、どうでもよくて、

魂のあり方や生き様が、最期の時に分かるという
タバコの煙が地獄ではなく、天が仮に空の方にあるのならば、
そこへ向かって、夕暮れの黄昏時の空に煙になって消え去ってゆく、父、夫との訣別と解放なのに。

何故か、亡くなったのを受け止めたくない愛し合った女である、妻だけが知る夫の香り。
タバコ臭い、恋した頃の香り。

隠れ人のような、家庭人としては
もう、全く最低なんだけれど

人としては、案外温かい心持ちの人で、
総じて、放蕩人生を家庭街?外活動で全うしてた。

かつての借金取りまで、
葬儀会場に上がりはしなくても、
土間のたたきで、合掌しに来る辺りは、正直泣けた。人は生きてこそだ!

あの金のやりくりは、
遊ぶカネじゃなかったのかも?!と思えて、
自分の気持ちが、ぐしゃっとなって思わず、ほろりと涙が頬をつたって、泣いてしまった。

高橋一生さんの、
葛藤する、横顔は美しい!

いい役者さまだな〜ととても感心しました。

リリーフランキー師匠を亡くしたような気持ちになり、余計に尚更に泣けてしまったよ。

お勧めします!

今を生き #タガタメ を大切に!ですね!
^ - ^)o

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監督:齊藤工
原作:はしもとこうじ
脚本:西条みつとし
音楽:金子ノブアキ

撮影:早坂伸
照明:田島慎
録音:西岡正己
美術:中谷暢広

助監督:桑原周平
ラインプロデューサー:大川裕紀

編集:小川弾・木村悦子
音響効果・ミキサー:桐山裕行
衣装:藤山晃子
ヘアメイク:伊藤里香、辻有見子
特殊メイク:TOXIC(千葉美生)

スタント:オフィスワイルド(柴原孝典、近藤知行、佐藤幹)
スチル:レスリー・キー
MA:株式会社1991
ポスプロ:ヌーベルアージュ、アクティブ・シネ・クラブ
ラボ:IMAGICA

ロケ協力:足利市、足利市映像のまち推進課、小山町フィルムコミッション ほか

スペシャルサンクス:板谷由夏、松崎健夫、菊地健雄、金沢知樹

製作者:坂東浩二、富永正人、藤本款、余田光隆
企画プロデューサー:佐久間大介
エグゼクティブ・プロデューサー:小林智
プロデューサー:小林有衣子、小川貴史
協力プロデューサー:宮野敏一(株式会社10+4(ジューシー))
制作プロダクション:イースト・ファクトリー

配給:クロックワークス
特別協力:ひかりTV
製作:「blank13」製作委員会
(ひかりTV、EAST GROUP、クロックワークス、TBSサービス)
(企画協力:福山雅治)
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