アズマロルヴァケル

blank13のアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

blank13(2017年製作の映画)
3.8
期待を裏切るわけがない家族ドラマ

・感想

斎藤工(齊藤工)監督作品という点と家族ドラマなのにコメディ要素があるという点では鑑賞前はかなり期待していたのですが、予想通りの展開なんだけど70分という短時間なのに内容が濃く、かつ分かりやすく映画として伝えていたので本編が終わったあとずっと余韻に浸りたくなる素晴らしい映画でした。正直言ってもっと色んな人にこの映画のことを知ってほしいです。

まず、冒頭で『松田宗太郎』の葬式に来た多くの参列者が間違えて主人公の父親である『松田雅人』の葬式の受付に行ってしまう下りがあるのですが、このとき観た私は「あれ?これっていきなりコメディ?」って思ってしまったもののラストにこの『松田雅人』の葬式と『松田宗太郎』の葬式がかなり面白い対比をしているので、非常に皮肉のようなシュールな描写で結構くどかったですね。

で、コントのように仕上がった父親雅人の葬式での後半の下りはとにかく文句なしに素晴らしい。個性派俳優から芸人が扮する様々な雅人の関係者が雅人の思い出を語るシーンはもはや最高というか、このシーンだけでも何度でもリピートしてしまいそうになります。特に今まで何度も偶然この人の出演作品を何度も観ちゃったのですが、本作ではオネエに扮している川瀬陽太さんがなかなかいい味を出してましたし、佐藤二朗演じる岡宗太郎もさほど面識のなさそうな他の参列者たちを仕切っていてとにかく最高でした。それでいて最後に雅人の遊び仲間扮する神戸浩さんが佐藤二朗並みに美味しいところを持ってきてくれるのでここで涙腺を刺激されそうになりました。

後半の葬式シーンは少なくとも賛否が分かれがちではあるのですが、どちらかと言えばコント仕立てとはいえきちんと笑えるシーンと泣けるシーンをちゃんとバランス良くできていたし、参列者たちが語る雅人との思い出は村上淳演じる多田や岡宗はお笑い要員ではあるものの、しっかり過度な説明や大笑いできるシーンがなく描かれているので個人的にはあまり不快に感じずにすんなりと観れましたね。

70分とはいえストレートに伝えていて、かつ人気芸人からちょっとマイナーな芸人がカメオ出演していたので上質な日本映画という観点ではなく、エンタメ路線の映画という観点でも味わえて観賞して良かったと思いました。斎藤工の次回作に期待です。