エミさん

blank13のエミさんのネタバレレビュー・内容・結末

blank13(2017年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

冒頭は父親(リリーフランキー)の葬儀シーンから始まる。
濃い登場人物が醸し出す、ムンムンなクセ有り気が、斎藤工監督の嗜好をビンビンに際立たせていて、のっけからザワザワさせられる。

各シーンの映し方が、外さない、イメージ通りのアングルであるのが、映画に精通してる故に王道だった印象を受けたが、やはり母親ヨウコ(神野美鈴氏)の時間と、息子コージ(高橋一生氏)の時間を、同じ時間軸で進行しているが、それぞれの視点で区別して表現していることで、平凡なそれぞれの人生が色濃く見えて、どこにでも居る中流な普通の家族が隔ててきた13年が見事にバッティングしてくるので、結果 → 回想 → 結果の補足といった進行構成なのだが、観ていく程に食べたことのない旨味がジワジワ出てくるので、その旨味に気付いた時には毒から抜けられなくなっているのだ。中盤の葬儀シーンがその集大成みたいな部分。もう佐藤二朗氏がそこに居る時点で出オチというか、アドリブで何かが始まるのであろうという雰囲気が出てましたが、まさに予想通り。参列者に織本順吉氏が出ておられ「おぉ〜すごい人が出ているなぁ」と思わされたが、続く村上淳氏、神戸浩氏、伊藤沙莉氏、川瀬陽太氏…と出てくるキャラの濃さ!極め付けはくっきぃ〜まで登場。人印!全員大まかなスタンス設定が有るのか無いのか分からないほどの自然な不自然さを醸し出していて、「ズルいなぁ〜」と心の底から思った。観客はこのライブの様な葬儀シーンを楽しんで笑う事しか選択肢が無いではないか…。

この映画、実体験を元に製作されたという話だが、だからこんなに脚色というよりリアルな生活感が作れたんだなぁという親近感を感じられた。自身も身内の葬儀で、参列した知らない人々から、誰よりも良く知っていると自負していた家族の全く知らない部分を聞かされて、世界がひっくり返ったほど驚いて、疎外感を感じさせられた経験がある。

誰でも多面性を持っているので、その場その場で合った役割を無意識のうちに演じていたり、人によって話せることも違ったりするし、相手を見る時に自分に都合のいいところだけを見たいという気持ちもあったりもするので、見ていない部分あるいは見せてもらえない部分があったりもする。そういった人間の多面的なものを、決して誰人も避けて通れない葬儀という人生の集大成みたいな縮図場面に持ってきて、挙げ句、ユーモラスに変換させて表現して、最初は、いかにもダメそうな人達がつるんで傷を舐め合って、何にも救いが無さそうに思えたのに、底辺かも知れないけど、そこは決して泥沼ではなかった…と、少しだけウルっとホッコリすることができた。

ネタにしてもらえるクズには救いがあるー。振り返って私も、たいがいのクズだが、松っちゃんみたいなクズな人生であっただろうか…?と思案してしまった。